オリンピックへの道BACK NUMBER
“シンクロの日本”が帰ってきた!
井村コーチ復帰で一気にメダル4個。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byYohei Osada/AFLO SPORT
posted2015/08/03 11:55
演技内容で観る者を感動させ、プールサイドでの師弟の涙によってさらに感動をくれた、シンクロ日本代表のメンバーたち。
リオに向けた、大きなアピールとなった理由とは?
こうして久々に世界大会で表彰台に上がることになった日本だが、リオデジャネイロ五輪を考えたとき、その意味は大きなものがある。
採点競技は、どうしてもジャッジする人の印象、心証が影響してくる。「この選手、チームは強い」と思ってもらえればそれだけで有利に働く。シンクロナイズドスイミングもまた採点競技であり、そういう面は他の採点競技以上に色濃くある。
日本は、近年、世界の5番手あたりと見られてきた。もしその地位のままでリオを迎えれば、表彰台を狙うのは非常に困難なものになっていただろう。今回、4種目でメダルを手にしたことで、日本の復調をリオへ向けてしっかり印象付けられたのは非常に大きいのだ。
世界の3番手に位置してきたウクライナが当面のライバルになるわけだが、今大会における五輪実施種目に限って言えば、ウクライナには3勝1敗と上回ることができたのも重要だ。
そして最も大きな財産は、井村コーチと選手との信頼関係が強まり、選手たちが自信を得たことだ。
「リオ五輪のメダルが見えてきました」
厳しい練習に耐え抜いてメダルを手にしたことで、選手たちの井村氏への信頼は増した。
「日本でたくさん練習してきたのが自信になって、今回は強気で臨めました」と乾はコメントしている。
何よりも、メダル獲得後の、デュエットあるいはチームの選手たちと井村氏の抱擁に、信頼が表れていた。そして結果が出たことで、選手たちは「自分たちでもやれる」と感じられるようになった。
井村氏自身、その手ごたえが得られたことを示すように、ハッキリと「(リオの)メダルが見えてきました」とコメントしている。
ロシア、中国は強く、今大会で激しく競り合ったウクライナも、日本にはない表現力を持つだけに、手強い相手であることには変わりない。それでも、オリンピックや世界選手権でメダルを手にした経験のない選手たちが初めてメダルをつかんだ意義は大きい。
2015年の世界水泳は、日本復活のターニングポイントとも言うべき歴史的な大会となった。