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<世界水泳プレビュー>
渡部香生子「フィジカル改善こそ、飛躍の鍵だった」
text by
藤田孝夫Takao Fujita
photograph byTakao Fujita
posted2015/07/29 06:00
度重なる不調や大舞台での敗北の涙を乗り越えて、かつてのシンデレラガールは日本のエースに成長した。本命の200m平泳ぎでは、世界ランク1位に君臨する。世界の頂を視界に捉えた今、彼女が見すえるものとは。
サングラス無しでは空を仰げない。地中海に面した南仏のリゾート地、カネ。雲ひとつない紺碧の空から注ぐ太陽が、梅雨を尻目にやってきた日本のスイマーたちを歓迎した。国内では決して味わえないこの解放感。基本的にインドアプール生活の日本選手団の面々が、幾分快活に映る。
そんな中、茶褐色に日焼けした渡部香生子は特に目立つ。トレーニングのせいか、纏う雰囲気のせいか、そのシルエットは昨年よりも確実に大きくなっている。今年も参戦する欧州GPは、9日間で3都市(カネ、バルセロナ、モナコ)を回る強行軍。短期の大移動はアスリートに負荷をかけ、精神的にも肉体的にも強くする。確かに強化、勝利は大前提。しかし合宿も含めた長期の海外遠征で育むべきは、自己管理能力である。帰国するまでの時間、どんな放物線を描き、どこに着地できたか。