オリンピックへの道BACK NUMBER
“シンクロの日本”が帰ってきた!
井村コーチ復帰で一気にメダル4個。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byYohei Osada/AFLO SPORT
posted2015/08/03 11:55
演技内容で観る者を感動させ、プールサイドでの師弟の涙によってさらに感動をくれた、シンクロ日本代表のメンバーたち。
世界トップレベルで戦うための、日本の強みが復活!
1つは同調性の向上。
もともと日本が世界大会で常にメダルを獲得していた頃、選手たちの一糸乱れぬ動き、すなわち同調性が高い評価を得ていた。
低迷時には失われていたその強みを、今大会では取り戻してきていた。選手の肉体改造をはじめ練習量を増やすなど改革に取り組んできた成果である。その練習量は、2人の選手が「ついていけない」と代表を離れるほどだった(とはいえ、以前の日本代表からすればスタンダードとも言える練習量ではある)。
井村氏は復帰直後、代表候補選手として並んだ選手たちを見て「とてもアスリートとは言えない」と感じていたという。
鍛え抜かれていない体。他の選手がミスしても何も文句を言わない風景に見え隠れする無責任さ(他人に何か言えば自分自身の責任が生まれる。それを回避しようとする姿勢)や勝負への執念の薄さ。
井村氏の考える、世界と戦える選手としての基準からも大きく下回っており、チーム全体は仲良しクラブのようにしか映らなかったという。
厳しい練習の再開は、それを元に戻す試みの一つであった。
練習で厳しさを貫いたこと――それによって選手たちの意識や姿勢に変化があったからこそ取り戻せたのが今回のメダル獲得につながった特性である“同調性”であった。
すべてを計算し尽くしていた、井村コーチの戦略。
また、演技のメリハリのつけ方にも改善が見られた。
工夫を凝らしたリフトをいくつも見せたチームのフリールーティンが最も象徴的だが、新生日本を印象付けるかのように、様々な新しい要素が取り入れられていた。
以前、井村氏がこのような趣旨の話をしていたのを思い出す。
「どんな理想を描いても、大会でできないなら意味はありません。選手たちの力量や強みを見極めて、大会までの時間を考えて、ここからの準備で実現できる最高の演技とは何かを考えて実現することが大事です」
現在の位置に甘んじているわけにはいかない。ただし、理想像をどのように思い描いても、形にならなければ意味はない。
コーチに復帰しての長くはない時間の中で、ここぞという部分を作り、メリハリをつけた演技でインパクトを出すのに成功した結果が、今回のメダルラッシュにつながったということだ。