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春のサプライズと波乱の展開。
~タイガース、ロイヤルズの躍進~ 

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芝山幹郎

芝山幹郎Mikio Shibayama

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posted2015/04/18 10:30

春のサプライズと波乱の展開。~タイガース、ロイヤルズの躍進~<Number Web> photograph by AFLO

ホームランを放ったJ・D・マルティネス(左)を祝福するミゲル・カブレラ。マルティネスは既に本塁打を4本打ち、カブレラの打率は4割を大きく超えている(4月16日時点)。

打線は強力だが、投手陣が持ちこたえられるか?

 近いところでは、'02年のジャイアンツが、ドジャースに3タテを食わせたケースが思い出される。調べてみると、あのときのスコアは9-2、12-0、3-0(3戦合計=24-2)だった。この年のジャイアンツは95勝66敗でシーズンを終え、ナ・リーグのペナントを獲得している。

 あるいは2000年のカーディナルスを思い出してみようか。こちらも開幕3連戦でカブスに3連勝しているのだが、スコア合計は30-8(7-1、10-4、13-3)という乱戦だった。この年、カーディナルスはナ・リーグ中地区を制したが、NLCSでメッツに1勝4敗と退けられている。

 きりがないからサンプルの列挙はやめよう。「開幕3連戦合計20点差以上の3連勝」を果たしたチームは、今季のタイガース以前に(1900年以降)15球団存在した。ポストシーズンに進出したのは、そのうち9球団。平均勝率は5割8分5厘(95勝ペース)というデータが残っている。

 タイガースも、この列に連なることができるだろうか。ミゲル・カブレラ、イアン・キンズラー、J・D・マルティネスを核とする打線が強力なことは疑いを容れないが、ダグ・フィスター、リック・ポーセロ、マックス・シャーザーをこの数年間でつぎつぎと失い、ジャスティン・ヴァーランダーが故障で欠場している先発投手陣には不安が残る。デヴィッド・プライス+アニバル・サンチェス+シェーン・グリーンまではよいとして、その他の先発陣が残り150試合以上の長丁場に耐えられるのだろうか。

さらに興味深い穴馬はロイヤルズか。

 タイガースも侮りがたいが、さらに興味深い穴馬はロイヤルズではないか、と私は思う。2014年ポストシーズン8連勝のマジックはまだ記憶に新しいが、今季開幕前のロイヤルズはやや戦力低下と見られていた。ジェームズ・シールズ、ビリー・バトラー、青木宣親といった主力の抜けた穴が懸念されたからだ。

 だが、シールズの穴はエディンソン・ヴォルケスが埋めた。バトラーの穴はケンドリス・モラレスが補っている。打線ではロレンゾ・ケイン、サルバドール・ペレス、マイク・ムスタカスといった20代選手の成長が著しいし、ウェイド・デイヴィス+ケルヴィン・エレーラ+グレッグ・ホランドのブルペンは去年にひきつづき健在だ。

 いいかえれば、ロイヤルズは2014年の勢いを維持し、若手の成長も計算できるチームになった。昨季終盤の快進撃をまぐれと軽視すべきではない。いまのところ不調のインディアンスやホワイトソックスもいずれ巻き返してくるだろうから、ア・リーグ中地区はハイレベルの激戦区になるはずだ。この地区の4強は、これからも眼が離せない。

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カンザスシティ・ロイヤルズ
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