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プライドと現実の狭間で揺れる思い。
江尻、高橋信、藤井のトライアウト。  

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田口元義

田口元義Genki Taguchi

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photograph byGenki Taguchi

posted2014/11/10 11:30

プライドと現実の狭間で揺れる思い。江尻、高橋信、藤井のトライアウト。 <Number Web> photograph by Genki Taguchi

日本ハムから巨人を経て、オリックスで3年目のシーズンを過ごし戦力外通告を受けた高橋信二。今季は出場が10試合、6安打だった。

高橋「自分だって負けるわけにはいかない」

 結果はレフトオーバーを含む3安打。日本ハム時代のパワフルな打撃が健在であることを、十分にアピールできた。高橋自身、「みんな生き残りをかけてここに来ているわけだけど、でも、自分だって負けるわけにはいかないから」とプレー中は強気の姿勢を貫いた。

 だがトライアウトが終わると、多少はほっとしたのか、こんな本音も漏らした。

「結果を出してもオファーがくるかこないかは分かりませんよね。ビジネスの世界だから。集大成というか、プロ野球選手だったひとつの証として、といったら変かもしれないけど、そういう気持ちはありますよ」

選手としてのプライドと、見えている現実の狭間で。

 選手としてのプライドはある。だが、現実から目を背けるほどベテランは無鉄砲ではないのだ。

 それは、江尻や藤井だって同じである。

「現役を続けたいって気持ちは100%ではないですよ。家族もいますからね。トライアウトが始まるまでは感じなかったけど、マウンドに上がったら『今日が最後かもしれないんだな』とか思っちゃいましたから」

 このように江尻が本音を漏らせば、藤井も「チャレンジし続けたい」と現役に強いこだわりを持ちながら、自分の足元もしっかりと見つめていた。

「人に野球を教えるのは好きだけど、コーチとしての知識がないですし(笑)。自分では『まだやれる』と思っているんで現役にこだわるわけですけど、先発でも中継ぎでも投げられる機会というか、立場を与えられるかどうかはまだ分かりませんから」

 昨年、トライアウトに参加した木田優夫や小林宏之のように、独立リーグに行ってでもプレーし続ける泥臭い野球人生も、ひとつのベテランの姿と言えるだろう。

 だが、今年の3人のような潔さにも、ベテランの美学を見たような気がした。

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