野球クロスロードBACK NUMBER
プライドと現実の狭間で揺れる思い。
江尻、高橋信、藤井のトライアウト。
posted2014/11/10 11:30
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by
Genki Taguchi
11月9日、2年連続となる静岡・草薙球場での12球団合同トライアウトは、今年も雨だった。
しかし、途中で屋外から室内に移った昨年と違い、ウォーミングアップとシートノックこそ室内だったものの、天候が好転したことによってグラウンドでプレーできたのは、選手やファンにとって幸運だった。
入場者数は、前日から悪天候が予測されていたため前年の1万人を大きく下回る約5000人。それでも、数年前まで“アンオフィシャル”に近かったイベントだと考えれば、十分に大盛況の部類に入る。
トライアウトの注目度が年々高まっていく中で……。
トライアウトの注目度が高くなる。それはつまり、NPB12球団の関係者たちの関心も増してくる、ということだ。各球団の編成スタッフはもちろん、昨年に続く視察となった中日の落合博満GMはじめ、DeNAの高田繁GMと、幹部クラスがこの地に訪れていたことが何よりの証拠である。
落合GMが「いい選手はいっぱいいた」と収穫があったことをほのめかしていたように、選手だって、当然のように球団首脳が目を光らせていることを理解している。今年は特にその意識が高かったようだ。
「独立リーグは考えていません。12球団にこだわりたい。トライアウトもこの1回に賭けてきたんで、2回目は出ないと思います」
トライアウトの先頭打者として打席に立ち、いきなり本塁打を放った、“ブーちゃん”こと中日の中田亮二がはっきりと言った。
今まで、ほとんどの選手は「独立リーグや海外も視野に入れて検討したい」と今後の目標を語り、2回目のトライアウトについても「オファーが来なければ考えます」と前向きなコメントを残していたものだ。
だが今年は、中田のように多くの選手がNPBでの現役続行に強い執着心を見せ、「2度目はない」と、1回目のトライアウトに不退転の決意で臨んだ。