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技術も上、戦術も上……なのに敗退。
U-19が北朝鮮に勝てなかった理由。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byGetty Images
posted2014/10/20 16:30
先制を許した後、南野のPKで同点には戻したが、結局はPK戦で決着をつけることに。南野のキックはキーパーに止められ、4大会連続の準々決勝敗退が決まった。
北朝鮮戦で見えなかった絶対的な「闘志」。
今回も同じだ。
何かが懸かった大一番では、相手よりも強い気持ちを持った方が勝つ。韓国戦が、まさにそうだった。だが北朝鮮戦で「何がなんでも勝ってやる」「オレがゴールを決めてヒーローになる」という気概を持ち、ファイトする姿勢を前面に出して戦った選手が果たして何人いただろうか。
もちろん、選手の力の問題が一番だが、妙な空気が蔓延しているのも感じた。
2008年のU-19アジア選手権でU-20W杯の出場権を失うまでは「自分たちの代で出場権を失うわけにはいかない」とみな必死だった。だが一度失ってしまうと、再び勝ち取るには相当の労力が必要だ。しかも何度も失敗してしまうと、どうしても本気度と真剣味が薄れてきてしまう。
また、行けないんじゃないか――。
出場権を失って以来、どこか弱気で、諦めにも似た空気がこの世代のチームに流れ、それが大事な試合で勝ちきれないひとつの要因になっているような気がする。
本当の意味で心を鍛える若年層の強化策を。
さらに現在の強化策が実を結んでいないのも確かだろう。
'90年代、日本がW杯初出場を目指していた頃、ユース世代は国際経験が不足し、アジアで勝てない状況だった。そこで日本協会は積極的に海外遠征に出て行く策を講じた。ホテルはボロく、ドサ回りのような遠征だったが、海外での過酷な日々と試合をこなすことで実戦経験とメンタル強化を両立させ、選手は力をつけていった。そのやり方はユース強化の黎明期にフィットし、1999年ワールドユースで準優勝を果たすなど、日本はアジアで急激に成長し、突出した存在になったのだ。
その後、他のアジアの国々はこぞって日本のメソッドを導入し、育成強化に努めた。日本の指導者も海を渡り、各国でトレーニングや組織としての在り方を伝授していった。すると他のアジアの国々も、ちょうど'90年代の日本のように急成長をし始めた。
一方、日本は個々の技術や組織的な戦術は洗練されていったが、チーム内での競争がボヤけ、メンタル強化が置き去りにされていった。今回のチームもどこかタフネスに欠けるように感じるのは、選手の気質の問題ではなく、単純にそういった強化が足りなかったからなのではないだろうか。