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技術も上、戦術も上……なのに敗退。
U-19が北朝鮮に勝てなかった理由。
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byGetty Images
posted2014/10/20 16:30
先制を許した後、南野のPKで同点には戻したが、結局はPK戦で決着をつけることに。南野のキックはキーパーに止められ、4大会連続の準々決勝敗退が決まった。
「日韓戦勝利の後が一番危ない」という経験則。
だが、不安がないわけではなかった。韓国戦の持つ意味が重すぎたのか、その一戦を勝ったことで、泣いて喜ぶなどナイーブになっている選手がいた。まだ何も掴んでいない状態で歓喜の涙を流すのは、良い意味で張り詰めた緊張感を解いてしまうことになりかねない。強敵に勝ったことに満足し、一番大事な試合に影響が出る――「ドーハの悲劇」につながった日韓戦以来、その危険性はいつも指摘されてきたのだ。幸い、前日練習では張りつめた雰囲気が戻り、それは杞憂に終わったかに見えた。
しかし、北朝鮮戦、選手の覇気が消えていた。
引いて守る相手を崩すには、多彩な攻撃のアイデアとパスの精度がより重要になる。だが、日本はなんとなく攻めている感じで最後まで一本調子だった。ドリブル突破をしたり、ワンツーを仕掛けるなどコンビネーションで打開するような術もなかった。そうなるとエースに負担がかかる。「なんとかお願いします」という苦し紛れのパスが多くなり、受ける南野は何度も相手につぶされた。そんな時は本来、パートナーの存在が重要になるはずなのだが、南野以外のFWは眠りから覚めることはなかった……。
実際、トップは毎試合日替わりで、最後まで軸が決まらなかったのだ。ベトナム戦で松本昌也、奥川雅也という攻撃的な選手をケガで欠き、やりくりが難しくなったという側面もあるが、南野を活かす選手の招集と起用をもう少し慎重に考えるべきだったと思う。
U-19は、なぜ4回連続でベスト8敗退している?
120分を通して日本がボールを支配し、技術もサッカーのスタイルも上だった。北朝鮮はラフファイトと「負けない」という気持ちだけだったが、そこに屈してしまうところに日本の根本的な“弱さ”がある。
「ベスト8の壁を越えられないのは、何らかの問題があると思います」
南野はそう言ったが、U-19日本代表チームが同じことを4回も繰り返しているのは、敗戦の中に何か通じる問題点があるということだろう。
なぜ、ベスト8の壁を突破出来ないのか。
試合にフォーカスすると、北朝鮮にあって、日本に足りなかったもの……それは「勇気」だったのではないか。
翻ってみると、今年のブラジルW杯。あれだけ期待された日本代表がまったく結果を出せなかったのも、勇気がなかったからと言えなくはなかったか。個々の選手には国際経験があり、技術もあるし、戦術もあった。だが、前にいく勇気、戦う勇気がなかった。それは、戦う以前の問題で、だからこそ日本の試合にみな、失望したのではなかったか。