野球善哉BACK NUMBER
投手故障の原因はMLBのみに非ず。
「熱投」「連投」を称える日本の風潮。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2014/07/28 12:10
速球だけでなく、スライダー(および縦スライダー)、ツーシーム、カーブを持ち球とし、しかも制球力まであるという立田。高校時代の伝説をスルーして、プロで活躍できるか?
松坂、和田、藤川と、黒田、上原の違いとは。
3人は高校時代、強豪校や伝統校のエースだった。松坂は春・夏連覇を果たしたチームのエースとして、和田は2年連続出場チームのエースとして、藤川は下級生時の出場ということで甲子園での登板イニング数は少なかったものの、古豪でやはりエースを務めた投手だった。
「エースは完投するもの」という風潮がプロ野球よりも色濃く、さらには日程が過酷な高校野球という土壌において、強豪校のエースであることは、どれほど彼らのその後に影を落としているのだろうか。
ドジャース、ヤンキースの投手として活躍し、39歳の現在まで靭帯に故障歴がない黒田博樹や、円熟の凄味を見せているレッドソックスの上原浩治が、高校時代はエースでなかったというのは有名な話だ。
「試合だけでなく、練習の球数が多すぎる」
だがそれ自体は単なる偶然に過ぎないとしたうえで、小島氏は根本的な問題に言及している。
「今、黒田や上原が39歳になっても活躍できている要因を、高校時代にエースじゃなかったことに求めるのは、こじつけかもしれないですね。
(私がスカウト時代に獲得した)黒田は、高校時代エースではなかったとはいえ、練習試合などではかなり投げていたはずです。黒田の恩師から聞いた話では、大体1000イニングくらいは投げているようです。日本の多くの投手は、小学校も中学も、プロに入ってからもそうだと感じますが、試合の球数だけでなく、練習の球数が多すぎます。キャッチボールが長く、練習の効率の悪さが気になるところであります。
つまり、問題は本当はジュニアから始まっているのではないでしょうか。ジュニア世代の育成は、緩やかな成長曲線にしなければいけないと思います。山に例えると、登れる山というのは、緩やかな斜面から頂上へ向かうものです。人が成長して上に登っていくのは、緩やかな登りでないといけない。実は選手にとって重要な時期は10代、20代よりもその前なのです」