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青木宣親を苦しめるチームの「思想」。
出塁率という最大の武器が足かせに?
posted2014/07/25 10:30
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Getty Images
ロイヤルズの青木宣親が正念場を迎えている。
オフにブリュワーズからロイヤルズにトレード。開幕からリードオフマンを任され、期待は高かった。しかし6月下旬に足のケガから故障者リスト入りし、7月11日のタイガース戦で復帰、さあ、ここから一気に調子を上げて後半戦に突入……と思っていたら、オールスターが明けてから、9番での起用が増えた。
これは、何を意味するのか?
実際、ヨースト監督の青木に対する評価が決して高くないことを示していることは間違いない。
スモール・ベースボール志向のGMが青木を獲得。
青木の獲得に動いたロイヤルズのデイトン・ムーアGMは、2006年のシーズン途中からこのポストに就き、順調にチームの強化を進めてきた。
ロイヤルズは1990年以降、勝ち越したシーズンは1991年、1993年、1994年、2003年の4回しかなかったが、デイトンはドラフトを重視した戦略を採り、昨シーズンは86勝をマークした。
今年は一気に地区優勝! という目標は決して願望ではなく、現実のものと思われた。そこでGMが獲得したのが青木だった。
ロイヤルズは昨シーズン、アメリカン・リーグでチーム防御率がトップ。発想としては1点差、2点差で逃げ切る野球を志すチームだ。1点が重いからこそ、細かい野球が出来る青木を獲得したのだ。
青木もGMの意図をよく理解し、
「とにかく塁に出てほしい、と言われているので、期待に応えるようなバッティングをしたいと思います」
とスプリング・トレーニングの時点では話していた。
たしかにシーズンに入ると、打席では粘り強くカウントを稼ぎ、レフト方向への流し打ちが目立った。「チーム・ファースト」を徹底する青木の健気なプレーぶりが見られたのである。