野球善哉BACK NUMBER
投手故障の原因はMLBのみに非ず。
「熱投」「連投」を称える日本の風潮。
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2014/07/28 12:10
速球だけでなく、スライダー(および縦スライダー)、ツーシーム、カーブを持ち球とし、しかも制球力まであるという立田。高校時代の伝説をスルーして、プロで活躍できるか?
アメリカを、メジャーリーグだけを理由にすべきではない。
右ひじ靭帯の部分断裂が発覚したヤンキース・田中将大のことだ。
日本が誇る若き大投手の故障による離脱は、松坂大輔(メッツ)が同じような故障を患ったとき以上に、日本の野球界に大きな影を落としたと言っていい。
しかし、彼の故障が重傷だと判明した後の報道を見ても、故障の原因を「メジャーのマウンドの堅さ」や「中4日の登板間隔」、「日米のボールの違い」など、メジャーの問題点探しに終始していることに多くの疑問を感じずにはいられない。
田中の故障の原因がメジャーの舞台だけにあると考えることは、日本の野球界に何の発展ももたらさないからだ。
そもそも、故障の要因が一つだけということはあり得ない。
病気にせよその他のトラブルにせよ、関連する多くの事柄から原因を探していかなければ、その世界は発展していかない。
我々が考えるべきは、メジャーに責任を転嫁することではなく、日本の野球界に問題がなかったかを検討し、同じような悲劇を起こさぬ方法を考えることなのではないだろうか。
元メジャースカウトが指摘する「投げすぎ」。
「靱帯を傷める投手の特徴、傾向が少しずつ見えてきています。小・中・高校生時代の、関節が出来ていない時からの投げ過ぎに問題があります。松坂大輔、和田毅、藤川球児、田澤純一、そして田中には、似たような傾向を感じます。アメリカでは、このことに一部の人間が気付き始めていますが、日本では聞いたことがありません」
元ドジャースのスカウトであり、現在は育成アナリストとして活動している小島圭市氏が、そんな話をしていたことがあった。
高校生からプロまで、幅広い年代の選手たちを取材する立場の人間としては、この指摘は見逃せない。
なかでも松坂、和田、藤川といった同級生の大投手3人が、ここ数年で立て続けに靭帯の損傷を起こしてトミー・ジョン手術を受けたという事実は、日本野球界の問題を示唆しているのではないだろうか。