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混戦の激化とトレードの行方。
~MLB静かな夏のストーヴリーグ~
posted2014/07/31 10:30
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph by
Getty Images
大リーグの混戦がつづいている。予想どおりとはいえ、勝率4割以下のチームがレンジャーズのみ、という事態までは考えていなかった。4割5分を切っているチームも、ナ・リーグで5つ(パドレス、フィリーズ、ダイヤモンドバックス、カブス、ロッキーズ)、ア・リーグで3つ(レッドソックス、アストロズ、レンジャーズ)しか見当たらない。
視点を変えると、勝率6割以上を記録しているのは2球団のみになった。アスレティックスとエンジェルス。アスレティックスは開幕直後からずっと好調を維持してきたが、投打の歯車が噛み合ったエンジェルスの巻き返しも無視できない。2強はそろってポストシーズンに進出するだろう。ただ、ワイルドカードで出れば大きな負荷がかかるだけに、どちらも本気で地区優勝を狙ってくるにちがいない。
となると必然的に、ワイルドカード・レースが苛酷になってくる。
1枠が埋まったも同然のア・リーグは、残る1枠を6球団が争う格好になっている。7月29日現在、ブルージェイズ、ヤンキース、マリナーズ、ロイヤルズがゲーム差3.5の間にひしめき、そのすぐあとから、インディアンスとレイズが追い上げている。レイズなどは最近10試合で9勝1敗のハイペースだ。開幕前にア・リーグ東地区の本命に挙げられていた球団だけに、一気にまくり上げる可能性がないとはいえなくなってきた。
混戦状態で、各チームが主力の放出を拒否。
ナ・リーグの場合も4球団のつばぜり合いが激しい。ブレーヴス、カーディナルス、パイレーツ、ジャイアンツがゲーム差1.5の間で明日なき戦いを繰り広げている。地区首位を走るナショナルズ、ブルワーズ、ドジャースの3球団も安閑としてはいられない。1位と2位の差を見ると、東地区がゲーム差なし、中地区が1ゲーム、西地区が2.5ゲーム。ことと次第によっては3枚の札がそっくり入れ替わるケースも考えられる。つまり7球団が、少しでも有利なポジションを狙って牙を研いでいる。
夏のトレードがいまのところ抑えた動きしか見せていないのは、この混戦状態が原因にちがいない。つまり、ペナントレースから降りた球団や、投げ売りセールをはじめた球団が、今季はことのほか少ないのだ。当然でしょう。ポストシーズン進出の可能性が残されているというのに、主力選手を放出する球団はない。逆にいうと、ワイルドカード同士の1ゲーム・プレーオフのためだけに大枚をはたいて有力選手を獲得するという発想も、あまり賢明とはいえない。