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大迫勇也、初ゴール以上の収穫。
ドイツでの研鑽はブラジルに通ず。
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byAFLO
posted2014/02/13 10:50
デュッセルドルフとのデビュー戦で、値千金の先制ゴールを決めた大迫勇也。ゴール以外にもポストプレーなどで持ち味を見せ、早くもチームの信頼を勝ち取ることに成功した。
昇格の切り札としてチームに勝利をもたらすために。
ここまでくれば、もう明らかだろう。
大迫は、すでに中心選手であり、昇格に向けた切り札であり、2004年以降ずっと2部に沈んでいる名門クラブの救世主として期待されている選手なのだ。
そこに、加入してからデビュー戦までに彼が見せてきた「実績」が加わった。
デビュー戦の2日前、こんなことがあった。午前11時過ぎ、チームの短めの練習が終わった。チームメイトの多くが筋力トレーニングをしようとクラブハウスに引き上げていく中、大迫は通訳を介してコーチのマルコス・フォン・アーレンに声をかけた。フォン・アーレンは戦術面を担当するチームの頭脳だ。そこからおよそ5分にわたり、コーチが派手なジェスチャーと、グラウンドの外まで聞こえてくるような大声でレクチャーを始めた。
「1つ目の合図は……。2つ目の合図は……。3つ目の合図は……」
「内容は教えられないです」と大迫は話したが、これはチームの守備のルールについての確認だった。
「自分から全部(教えてほしいと)言っているから。守備の仕方だったり。(チームとしての決まりごとが)わかったならいいけど、わからなかったら、聞こうとはしています」
必要であれば、すぐに聞く。自らがゴールを決めやすい環境を整えるために、チームの勝利につながる動きをするために、やるべきことをやる。それはすでに大迫にとって、当たり前のことでしかない。
ボールを奪われたら奪い返す。守備でも手を抜かない。
デビュー戦でも、その意識の高さは見られた。
前半25分、ドリブルを仕掛けた大迫は2人に囲まれ、リンドルにボールを奪われてしまった。しかし、すぐにボールを奪い返そうとした大迫は、ドリブルを始めたリンドルを追走。後方から足を出して、アタックにいった。これはファールになったが、守備でも気を抜くことがない。
あるいは、自らがゴールを決めたわずか2分後に訪れた、相手のゴールキックのシーン。2トップを組むラウトに向かって、大声とジェスチャーで指示を出した。相手の左サイドのディフェンダーへのパスコースをきらなければいけないラウトが、それを怠っていたからだ。