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「縦へ速く」か「ポゼッション」か。
なでしこが見失った、立ち返る場所。
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![河崎三行](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/6/3/-/img_63c0172edf1a3eec5d5017836b5eb9301895.jpg)
河崎三行Sangyo Kawasaki
photograph byAFLO
posted2013/07/30 10:31
![「縦へ速く」か「ポゼッション」か。なでしこが見失った、立ち返る場所。<Number Web> photograph by AFLO](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/8/b/700/img_8b5a6184d91aa81ee64e65cfa5d94d5b387147.jpg)
韓国に1-2で敗れたなでしこジャパン。東アジアカップでは、最終戦で中国を1-0で下した北朝鮮が優勝し、日本は2位に終わった。
最終戦で格下のはずの韓国に完敗し、東アジアカップ3連覇を逃したなでしこジャパン。2得点を挙げた相手のエース、チ・ソヨンにしてやられたというより、主将の宮間あやが振り返ったように、自滅と評されても仕方のない試合内容だった。
今大会でのなでしこについては、6月のニュージーランド戦やそれに続く欧州遠征の時と同様、チームの新たな攻め手である『縦への速い攻撃』が、大会前から各新聞、雑誌によって取り沙汰されていた。
曰く、従来のようにポゼッションやショートパスでの崩しありきではなく、敵ボールを奪った際、即座に強い縦パスをトップに入れることができれば、相手の守備が整っていないのでより効率的に決定機を作れる。習得できれば、強固な守備ブロックを形成する欧米強豪国を相手にした時、特に有効な戦術である云々……。
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それは確かに、佐々木則夫監督によって選手に与えられた新たな課題であった。だが指揮官はもちろん、さらには周囲を取り巻く記者たちからも折に触れて『縦』問題を投げかけられているうち、選手たちが過剰に意識し過ぎてしまったのが、東アジアカップを含むここ数戦ではなかったか。その結果、もともと持っていた世界に冠たる武器である、ショートパスを主体にした小気味よいポゼッションが鳴りを潜めてしまった。そしていざポゼッションに入った場合でも、ぎくしゃくしたパス回しや不正確なトラップ、あるいは不用意なドリブルでみすみす敵にボールを渡してしまう機会が目立ったのである――。
現在のなでしこは「角を矯めて牛を殺す」になっていないか?
ニュージーランド戦以降、なでしこの戦い方を見ていると、どうしても「角を矯めて牛を殺す」という言葉を思い出さずにはいられない。たとえば広辞苑では、〈少しの欠点を直そうとして、その手段が度を過ぎ、かえって物事全体をだめにしてしまう〉ことだと解説されている成句なのだが。
正直なところ、『縦へ、速く』の攻撃パターンは、今のところ『放り込み』にしかなっていない。縦パスの多くが、不適切なタイミングで、不適切な場所に向けて出されていたのだ。