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カタールは本当に不正を行ったのか?
南米に飛び火した'22年W杯招致疑惑。
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byREUTERS/AFLO
posted2013/03/20 08:03
2012年12月、南米サッカー連盟の会合で立ち話をするグロンドーナ・アルゼンチンサッカー協会会長(左)とレオス・パラグアイサッカー協会会長。二人とも、2022年W杯選挙でカタールに投票したことをめぐり、数々の“疑惑”が指摘されている。
1月29日発売のフランス・フットボール誌(以下FF)に掲載された“カタールゲート”(2022年ワールドカップ開催国決定投票における、カタールによるFIFA理事への不正工作疑惑)のレポートは、反響もまた凄まじかった。前回(2月24日、本欄コラム)の続きとして、カタールゲート第2弾はFF記事発表後の余波をお伝えする。
フランス国外のメディアはそれぞれの紙面で、ライバル紙を利することを嫌う国内メディアは主にウェッブサイトで、その内容を詳細に伝えた。たとえばル・モンド紙のサイトでは、ゼップ・ブラッターFIFA会長のこれまでのコメントを集めて、インタビュー形式で掲載している。タイトルは彼の言葉を引用して、「マフィア的システムのイメージのもと、FIFAは金の卵を産む鶏を飼い続けたがっている」。
しかし現実にブラッターは、FFの指摘に具体的な反論はせず、沈黙を守り続けている。また彼の右腕でFIFA事務局長のジェローム・バルケも、雑誌発売日の翌日にリオデジャネイロで行われたブラジルワールドカップ・公式ポスター発表会で質問の嵐にさらされた。だが、彼もまたこう答えるにとどめている。
「もしも本当に調査する必要があるのであれば、FIFAは完全に独立した倫理委員会がその任に当たる」
大統領以上の権力を持つと言われるアルゼンチン協会会長の動向。
逆に怒りを露わにしたのが、ミシェル・プラティニUEFA会長だった。エリゼ宮でのニコラ・サルコジ大統領(当時。もともとカタールとの繋がりが強く、大統領就任後は経済面で両国は極めて緊密なパートナーになった)、タミン・ビン・ハマド・アルタニ・カタール皇太子との秘密の談合(FIFA理事会でのカタールへの投票)を指摘された彼は、真っ向から否定するとともに訴訟も辞さないというコミュニケを発表した。
さらにFF自身も、翌週2月5日発売号で4ページにわたり反響を紹介している。その中で特筆すべきは、自国の当事者たちをメディアが批判した南米の動向である。
カタールに投票した南米の3人の理事のうち、フリオ・グロンドーナ・アルゼンチンサッカー協会会長がFFのカタールゲート掲載号が発売されたその日、'79年以来務めている協会会長職を現在の任期が切れる2015年に退くとコメントした。共和国大統領以上の権力を持つといわれたグロンドーナも、追及の手が自らに及ぶ前に、安全な場所に逃れようとしているのか。それともFIFA副会長は'15年以降も続けるという彼は、単に批判の矛先をかわそうとしているだけなのか。