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カタールは本当に不正を行ったのか?
南米に飛び火した'22年W杯招致疑惑。
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byREUTERS/AFLO
posted2013/03/20 08:03
2012年12月、南米サッカー連盟の会合で立ち話をするグロンドーナ・アルゼンチンサッカー協会会長(左)とレオス・パラグアイサッカー協会会長。二人とも、2022年W杯選挙でカタールに投票したことをめぐり、数々の“疑惑”が指摘されている。
灰色を黒と言い切れないディレンマを抱えながら……。
以上、FFは継続的にカタールゲートの続報を流している。だがそれは、さらなる疑惑の積み重ねやすでにある疑惑の補完であり、決定的な証拠の提示はどこにもない。灰色を黒と言い切れないディレンマを抱えながら、キャンペーンを続行しつづけた。
これに対しレキップ紙は、1月26日の紙面で、ブラッター会長の右腕・バルケ事務局長の独占インタビューを掲載した。以下に要約する彼の主張は明快だ。
2018年(ロシア)、'22年(カタール)両ワールドカップの決定手続きは、可能な限りの透明なプロセスに則っておこなわれた。ここまで不正や疑惑の証拠は何ひとつ見つかっていない。不正は証拠を伴って初めて証明される。それは糾弾するものが明示すべきであり、明確な証拠がない限り再投票もあり得ない。
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また自身がジャック・ワーナー理事(当時。モハメド・ビン・ハマムAFC前会長の買収工作に連座して失脚)に送った「カタールはWCを金で買った」というメールの意味は、カタールのロビー活動の予算規模の大きさ、圧倒的な財力を言っているのであって、金で理事たちを買収したという意味ではない。ビル・クリントンはじめ各国要人や首脳が集まった投票の場で、そんなことができるはずがない。
そして大会の冬季開催については、理事会が決めるべきことであり、FIFAは大会時期を変更する権利があると規定に定められている。プラティニはじめ何人かの理事が主張しているが、カタールからの要望があれば具体的に考慮すべきである。
……といった次第で、レキップ紙もまたFF以上に追い詰める手立てを持ってはいなかった。それではいったいどこに、さらなる追及の矢はあるというのか?
3月20、21日のFIFA理事会で裏金事件の一端が明らかに!?
FFは3月12日発売号で、マイケル・ガルシアの独占インタビューを敢行した。昨年7月にハンス・ヨアヒム・エッケルト(FIFA倫理委員会・判定局長)とともに同委員会・調査室長に就任したガルシアこそ、カタールゲートのもうひとりの主役である。ガルシアこそは、誰からも干渉を受けることなく、疑惑を調査できる唯一の人物であるからだ(詳しくは、前回のコラムも参照してほしい)。
彼が作成した(FIFA会長選挙に向けての買収工作に関する)予備調書をもとに、昨年12月、当事者であるモハメド・ビン・ハマムはサッカー界から永久追放された。また最初の本格的な仕事となったISL事件も、調査はほとんど終了した。
ちなみにISL事件とは、FFによれば、1982年に創設され、2006年WCまでのマーケティング権を保持する(アディダスの故ホルスト・ダスラー社長の関連会社と電通の共同出資会社である)ISLがおこなった裏金作りである。2001年5月、3億スイスフランの負債を抱え、ISLはスイス・ゾウグ郡の裁判所に倒産を宣言した。
ところが昨年7月の調査報告で、リヒテンシュタインとアンドラ、ヴァージン諸島にまたがるマネーロンダリングシステムが発覚。そこからジョアン・アベランジェFIFA前会長とその娘婿で同じブラジル人でもあるティシェイラが、約1500万スイスフランの裏金を得ていたことが明らかになる。また1億2200万スイスフランが、別の14人に流れていたことも判明し、このうちの幾人かの名前が、3月20、21日両日のFIFA理事会で明かされる模様である。