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カタールは本当に不正を行ったのか?
南米に飛び火した'22年W杯招致疑惑。
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byREUTERS/AFLO
posted2013/03/20 08:03
2012年12月、南米サッカー連盟の会合で立ち話をするグロンドーナ・アルゼンチンサッカー協会会長(左)とレオス・パラグアイサッカー協会会長。二人とも、2022年W杯選挙でカタールに投票したことをめぐり、数々の“疑惑”が指摘されている。
ブラジルのティシェイラとカタールとの結びつきは!?
とはいえグロンドーナは、ブラジルのリカルド・ティシェイラほどに、集中砲火を浴びているわけではない。ティシェイラは、前回のコラムでも紹介した通り、2012年3月、FIFA理事もブラジルサッカー協会会長も辞して、2人目の妻(最初の妻はジョアン・アベランジェ前FIFA会長の娘)とともにマイアミに亡命者のように移住している。
2010年にフロリダでカタール皇太子と食事をした際に、ガルフストリームCV社のプライベートジェット――ブラジル協会がチャーターしたのでないならば、その費用19万ドルは誰が負担したのか?――を使用したティシェイラは、カタール組織委員会との密接な結びつきをメディアに暴露された。もはや彼の復権は絶対にあり得ないと、ブラジルでは言われている。
3人のなかで、ただひとりこれまでと変わらぬ静けさの中にいるのが、ニコラス・レオス・パラグアイ協会会長である。もともとはジャーナリスト出身で、現在はパラグアイ屈指の大地主でもあるレオスは、'86年からCONMEBOL(コンメボル=南米サッカー連盟)会長を、'98年からFIFA理事を務めている。
大統領をもダシにするパラグアイの“冠なき王様”。
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南アフリカ・ワールドカップの前年には、ブラックマーケットにチケットを流した業者との密会動画をティシェイラとともに撮られても、「ノーコメント」だけで何事もなく切り抜け、またイングランドに対し、2018年ワールドカップ開催投票の見返りとして、ナイトの爵位に加え、FAカップをレオスカップに改名することを要求したレオスは、“冠なき王様”の異名をとるパラグアイの絶対権力者である。彼を批判できない自国メディアに代わり、FFが2月26日号で疑惑を指摘している。
そのひとつが、2010年8月におこなわれたハマド・ビン・カリファ・アルタニ・カタール首長(国王)のパラグアイ訪問。カタール側の意を受け、レオスがフェルナンド・ルゴ大統領(当時)に強力に働きかけて実現したこの訪問は、直前までメディアに伝えられず、首長のスピーチもその場で通訳が訳すという慌ただしさだった。
「彼らが自分たちに投票するよう求めてくるのは間違いない」と、大統領スポークスマンのひとりは地元紙の記者に語った。レオスと会うために、大統領がダシに使われた格好だった。両国の関係強化を謳いながら、首都アスンシオンにはいまだカタール大使館が設置されず、シェラトンホテルの一室に事務所を設けているだけなのは、あまりにも不自然である。
そしてもうひとつが、CONMEBOL(南米サッカー連盟)のオフィシャルホテルであるバーボンホテル建設資金である。費用の7500万ドルは、「多くの投資家たち」の出資により賄ったというのが唯一の公式見解だが、具体的な名前は一切明かされていない。また金の動き自体も不透明で、一部はブラジルから介入したティシェイラのファミリーに流れたとされている。そこにもカタールは関わっていたのではないか……。