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オリンピックが「聖地」にやってきた!
今回こそテニスが“記憶に残る”理由。
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byGetty Images
posted2012/07/22 08:01
イギリス人選手として74年ぶりのウィンブルドン決勝進出を果たしたアンディ・マリー。死闘の末フェデラーに敗れたが、五輪の舞台で再び「聖地」に帰ってくる。
いよいよ今週からオリンピックが始まる。7月25日に現地入りし、レポートを書く予定だが楽しみにしている競技がある。
テニスだ。
オリンピックでのテニスの歴史を振り返ってみると、第1回のアテネ大会から正式種目に採用され、1924年のパリ・オリンピック(映画『炎のランナー』の舞台となった大会)まで続いていた。
1920年のアントワープ大会では日本の熊谷一弥がシングルス、柏尾誠一郎と組んだダブルスで銀メダルを獲得した歴史がある。
しかし1928年から除外され、ようやく正式種目として復活したのは1988年のソウル・オリンピックからである。これは当時のサマランチ会長の「プロ開放路線」に乗ったものだったが、果たしてオリンピック競技としてテニスが成功してきたかというと、そうとは言い切れない。
やはりウィンブルドンをはじめとした四大大会が機能しているため、オリンピックとはいえどもステイタスは低い。
これまでは、五輪より四大大会の活躍の方が記憶に残ったが……。
過去の大会の金メダリストを記憶しているとしたら、相当なテニス通だと思う。私が記憶しているのは、アトランタ大会の男子金メダルに輝いたアガシ。私がテニス会場に足を運んだからということもあるが、地元の優勝ということで盛り上がっていたのだ。前回は北京で取材していたのに、ナダルが勝った記憶はない(錦織が敗れた時点で、テニスは取材対象から消えたのだ。他に見る競技がたくさんあるので、手に負えなくなる)。
女子は過去にグラフ、カプリアティ、エナンといったそうそうたる選手たちが金メダルを獲得しているが、やはり彼女たちの四大大会の活躍の方が記憶に残る。
しかし、今回のロンドン・オリンピックは長く記憶に残る大会になりそうだ。選手の間でも「今回は特別」という意識があるようだ。
なにより、会場がウィンブルドンだからだ。