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逸材揃いだった夏の甲子園を総括。
スカウト注目の54選手を一挙紹介!
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byHideki Sugiyama
posted2011/08/24 10:30
金沢・釜田佳直投手は、3回戦の習志野戦で今大会タイ記録の153キロをマークするなど9奪三振2失点と好投するも、1-2で惜敗した
最速153キロの釜田は魅力的だがフォームに問題あり。
釜田は今大会、ストレートが最速153キロを計測し、甲子園球場の観客をアッと言わせた。ただ、投げるまでに2、3回ギアチェンジするような、流れがスムーズでない投球フォームが、生命線のストレートからキレを奪っていた。1回戦の伊勢工戦で奪った10三振のうちストレートによるものは2つだけ。横変化のスライダーのキレがよかったことは確かだが、打者の手元でひと伸びする“質の高いストレート”を会得できれば、力で押すピッチングにさらに磨きがかかると思った。
北方もストレートが最速153キロを計測し、観客のどよめきを誘ったが、投球フォームは釜田同様に問題があった。鉄の棒を両肩の上に通した状態で投げている、という喩えが最も適切だろうか。つまり左肩の開きが早い。
こういうフォームはスライダー系を投げるのには適しているようで、140キロ台のカットボールには驚かされたが、1回戦で対戦した古川工がストレート狙いに徹したように、早い体の開きはボールの出所を見やすくしていた。
スカウトの評価は「涌井型」の吉永、原、松本に集まる?
「涌井型」の吉永、原、松本には150キロ以上の快速球はない代わりに、早い体の開きとか、トップ時のヒジの下がり・緩みという欠点がない。また、「150キロ以上の快速球はない」と言っても、内角に腕を振って140キロ台のストレートを投げ込めるコントロールがあり、さらに原は横スライダー、松本は縦スライダー、吉永は縦スライダーとシンカー(チェンジアップ)という勝負球を備え、打者を緩急で翻弄する技もあった。
どちらのタイプを評価するかはスカウトによっても変わってくるが、近年のドラフトでは完成度の高い「涌井型」を優先する傾向がある。そういう球界の趨勢に思いを馳せることができるほど、今大会の投手陣は多士済々だったということである。
長距離砲とクラッチヒッターに二分された野手の顔ぶれ。
◇野手編◇
長距離砲と確実性の高いクラッチヒッター(勝負強い打者)という分類も今大会はできる。長距離砲は横尾俊建(日大三)、高橋大樹(龍谷大平安)、北川倫太郎(明徳義塾)が代表選手で、クラッチヒッターは畔上翔、高山俊(ともに日大三)、松本剛(帝京)が代表選手である。
また、野手にはディフェンスと走塁まで含めた総合評価が必要で、このカテゴリーに入ってくるのが佐藤竜一郎(作新学院)だ。