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<チームパシュートの期待の星たち> 4つの個性をひとつにして。 ~特集:バンクーバーに挑む~
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![宮部保範](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/6/3/-/img_63c0172edf1a3eec5d5017836b5eb9301895.jpg)
宮部保範Yasunori Miyabe
photograph byYoshiyuki Mizuno
posted2010/02/06 08:00
![<チームパシュートの期待の星たち> 4つの個性をひとつにして。 ~特集:バンクーバーに挑む~<Number Web> photograph by Yoshiyuki Mizuno](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/7/5/700/img_75227d6b1dbb70554ee72e20048f9fb122036.jpg)
高木の高いポテンシャルにメンバーも期待を寄せる。
高木は小学生の頃から偉才として見られ、スケーターとしての将来を嘱望されていた。しかし、その期待をよそに夏はサッカー中心、冬でも大好きなヒップホップダンスを優先することもしばしばで、周囲のスケート関係者をやきもきさせてきた。
本人も、バンクーバー行きを狙っていた様子はまるでない。
「代表になった今でも、夢みたいです。五輪っていう言葉は、代表になるまで全然チラついてませんでした。去年、遠征先のバンクーバーで世界距離別の大会を観た時に『みんな、こんな空気の中で滑ってるんだ。自分もここで滑ることがあるのかな』って思ったくらい。この夏はサッカーばかりやってましたし」
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気負わず、飄々としながらバンクーバーへの切符を手にした高木だが、その資質にはメンバーも期待を寄せる。穂積はこう語る。
「今、パシュートを戦う上で、一番速い選手だと思う。スピードもスタミナもあって、合わせた時にどんなタイムが出るかワクワクします」
チームが一丸となって戦うことの強さと安心感。
これまで、サッカーでは「みんなと喜び合えるのが楽しい」という経験をしてきた高木だが、チームで戦う団体追い抜きについて、どういう印象を持っているのだろうか。
「楽しみですけど、ちょっと不安もあります。サッカーだったら、自分がミスしてもカバーしてくれる人がいるじゃないですか。そういう安心感もあって思いっきりできるんですけど、パシュートって転んだりしたら、それこそ命取りだし。一緒に滑る人もすごく速いじゃないですか。だから、最初は緊張するだろうし、うまくできるのかなって思ったりもする。でもまぁ、なるようになるのかなって(笑)」
![高木美帆](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/a/2/242/img_a274efda7e11775ef82e58e7a7ec9bb822233.jpg)
1994年5月22日、北海道生まれ。幕別札内中3年。5歳からスケートを始める。昨季の全日本ジュニア選手権で総合優勝、世界ジュニア選手権は総合4位。サッカーでは15歳以下の有望選手合宿に北海道選抜で参加。163cm、57kg
代表に選ばれて間もない高木が不安を感じるのも無理もない。しかし、先のW杯で初めて団体追い抜きを戦った小平は、チームで戦うことの強さと安心感を知っている。
「レース後半でコーチの指示にとまどって離れかけた時、田畑さんが咄嗟の判断で先頭の穂積と私の差を埋めるように、絶妙な位置に入ってくれたんです」
高木はまだ知らないだろうが、「田畑の状況判断は職人の域だ」と関係者は口をそろえる。田畑はレース中の心境をこう話す。
「周りの状況を把握して、後ろは絶対離れないってわかっていれば、自分が先頭に出たときに速いラップで回れる。心の安心感というか、チームの強さへの信頼感があれば、いろんな形のレースができるんです」
日本チームは、五輪開幕の3週間前から事前合宿をカナダ・カルガリーで行ない、4人の呼吸を合わせていく。高木もきっと安心して、本番のスタートラインに立てるはずだ。