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<メダルが期待される選手たち> 里谷多英 「愛子の姿に教えてもらった」 ~バンクーバー展望~
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![時見宗和](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/6/3/-/img_63c0172edf1a3eec5d5017836b5eb9301895.jpg)
時見宗和Munekazu Tokimi
photograph byAFLO
posted2010/02/09 10:30
![<メダルが期待される選手たち> 里谷多英 「愛子の姿に教えてもらった」 ~バンクーバー展望~<Number Web> photograph by AFLO](https://number.ismcdn.jp/mwimgs/0/0/700/img_00ea8aebf8ee5ab374719b0479f6bc6513115.jpg)
「私に足りないのは、エアと体力とものごとを継続する意志。(上村)愛子の戦う姿にそれを教えてもらいました」
一昨年の3月、上村愛子がワールドカップ総合優勝を決めたことを知った里谷多英は、予定していた引退記者会見をキャンセル。オフシーズンに入ると、「ひと夏でウォーター・ジャンプを300本跳ぶことを目標に」故郷札幌を離れて、長野県・白馬村に移住した。
ナショナルチームの合宿メンバーからはずされていたために、トレーニングは基本的にひとり。ウォーター・ジャンプを1本跳ぶごとにプールサイドのコンクリートの上に小石を並べ「トレーニングの最後にそれを見て、満足して帰った」。それまで夏のトレーニングは好きではなくて、ウォーター・ジャンプは大嫌いだったが、この夏は楽しくてしかたがなかった。
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「この歳でも成長できることがわかって、すごく嬉しかった。もし、モーグルをやめたら、このときめきをどこで得ることができるのだろう。そう思える毎日でした」
自力で引き寄せた史上最多タイとなる5回連続の五輪出場。
冬が近づいてもW杯遠征メンバーに引き上げられる気配はなかったが、ひとりで夏を乗り越えた里谷の意志は揺らぐことはなかった。
「短期間しか集中することができなくて、持続性がない性格を直すために、きっと必要なプロセスなんだろうと思いました」
世界をめざす若いモーグル選手の登竜門として位置づけられているのが“ノーアム”と呼ばれるノースアメリカンカップ。32歳の里谷は世界各国の10代の選手に混じって、'08-'09年シーズンのノーアムをひとり転戦。実績を積み、W杯遠征メンバーへ復帰した。さらに今季W杯で決勝進出を重ね、日本女子の冬季オリンピック史上最多タイとなる、5大会連続のオリンピック出場を引き寄せることに成功した。