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<チームパシュートの期待の星たち> 4つの個性をひとつにして。 ~特集:バンクーバーに挑む~
text by
宮部保範Yasunori Miyabe
photograph byYoshiyuki Mizuno
posted2010/02/06 08:00
克服すべき弱点を把握している2人に「不安はない」。
1986年5月26日、長野県生まれ。信州大学を経て、'09年相澤病院に就職。今季の全日本距離別選手権で500、1000、1500mの3種目を制覇する。W杯でも500m3位、1000m2位を記録。500mの日本記録も更新した。165cm、61kg
話を聞くと、2人とも自分の弱点について自覚していた。小平は語る。
「W杯では、最後の2周でラップを落としてしまった。でも、前の週から数えると9レース目だったし、レース前から疲れも感じていました。五輪では、ラスト2周のスピードは維持できると思います」
確かに、3種目にエントリーしていた小平のW杯の日程は過酷であった。五輪では中4日で団体追い抜きの初戦を迎えることもあり、小平は「不安はない」と言い切る。
一方、穂積はチーム内における自らの役割と課題についてこう考えている。
「自分の仕事はレース終盤でラップを落とさずに、最後の周回を滑り切ることです。課題はスタート直後に離れずについて行くこと。スタートさえうまくいけば、自分では出せない田畑さんや小平のスピードにもついて行けると思うので、できるだけスタート練習もするようにしています」
スーパー中学生・高木の加入で、最速により近づいた。
しかし、たとえそれぞれの力が世界と戦えるものだったとしても、レースに出場する3人の調子を3レースとも最高潮にするのは難しい。「その時にスピードが出ている人を見極めて使えるかが大事」と田畑は言う。それを実現するには、3人の力だけでは足りない。'09-'10 シーズンのW杯前半戦を終えた時点で、日本はまだ、エントリーの4枠を目いっぱいに使って最速の組み合わせを決めるだけの余力はなかった。
そんな中、昨年末に開催された日本代表の最終選考会に、衝撃が走った。15歳7カ月の中学生、高木美帆が、女子1500mでバンクーバー五輪の標準記録を突破して優勝したのだ。高木は1000mと3000mでも3位に食い込み、日本スピードスケート史上最年少の五輪代表の座を射止めた。
スケート界の超新星として現れた高木は、女子団体追い抜きを戦うために必要なスピードとスタミナを兼ね備えていた。ジュニアチームでの団体追い抜きの経験しかない高木が、メダルを狙おうとするチームに突然入ることを危ぶむ声もあった。しかし、日々進化し続ける速さと強さ、そして堂々たる結果によって団体追い抜きの代表に選ばれた。羽田ヘッドコーチは「そりゃあ、選ぶでしょ。強いんだから」とチーム入りを歓迎した。