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「彼の打ちにくさを生んでいるのは…」浦和実業・石戸颯汰“打たれない120キロ”の秘密は? プロスカウトの助言は「スピードを欲しがらないこと」 

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安倍昌彦

安倍昌彦Masahiko Abe

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posted2025/03/28 17:05

「彼の打ちにくさを生んでいるのは…」浦和実業・石戸颯汰“打たれない120キロ”の秘密は? プロスカウトの助言は「スピードを欲しがらないこと」<Number Web> photograph by JIJI PRESS

遅い直球と超変則フォームで強豪校を抑え込んだ浦和実業のエース・石戸颯汰。「飛ばないバット」時代の申し子とも言える活躍だった 

投手の仕事は「タイミングを外す」こと

 投手のいちばんの仕事は、打者のタイミングを外して、気分良くフルスイングさせないことである。

「球速」とは、打者のタイミングを外す手段の一つであり、150キロ、160キロという大きな球速は、打者の振り遅れを誘うという意味でタイミングを外すもので、120キロ、110キロの遅い球速は、打者をのめらせてスイングを崩すという意味でタイミングを外すものである。

 高速性能のバッティングマシンの進化によって、大きな球速に対する練習ができるようになり、150キロ台でもバットに当てられたり、外野に弾き返されている場面を、このセンバツで何度も見た。

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 逆に、甲子園出場クラスの強豪ほど、「遅いボール」を軸にしたバッティング練習は、あまりなされていない。そこに、石戸投手のような「変則」という要素が加わると、さすがの超高校級の強打線もこれだけタイミングを外されて、攻略に苦労する。

 私は投手経験がないから実感としてわからないが、投手のほとんどが「スピード」を武器としても、ロマンとしても、とても欲しがる。

 しかし身体能力には個人差があり、なかなかそうもいかない投手もたくさんいて、彼らは彼らなりに懸命に練習を重ねて自己実現を目指す。

 その成長の「針路」に、うわべの「数字」ばかりを追い求めるのではなく、打ちにくさという工夫と知恵で打者のタイミングを外す投手の仕事の「第一義」を据えてみよう。

 そんな、本来的な「投手のあり方」を、このセンバツのマウンドで浦和実業高・石戸颯汰投手が体現してみせた。                          

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センバツ甲子園で18イニング連続無失点…浦和実業・石戸颯汰の「120キロの速球」はなぜ打たれなかった? プロスカウトが語ったその「意外な秘密」

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#石戸颯汰
#浦和実業高校

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