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“低反発バット時代”に「フルスイング野球」へ大転換!? 花巻東が「守り勝つ野球」を捨てたワケ「メジャーで日本人がHR王を獲る時代ですから」

posted2025/03/29 11:01

 
“低反発バット時代”に「フルスイング野球」へ大転換!? 花巻東が「守り勝つ野球」を捨てたワケ「メジャーで日本人がHR王を獲る時代ですから」<Number Web> photograph by JIJI PRESS

花巻東は5番打者の赤間史弥をはじめ3人が木製バットを使用。豪快なフルスイングの野球へのスタイルチェンジを見せた

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氏原英明

氏原英明Hideaki Ujihara

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菊池雄星、大谷翔平を輩出した花巻東。投手力を中心に守り勝つ野球が特徴だった同校が、今回のセンバツで見せた野球はまったく違うものだった。低反発バットの時代に、花巻東はなぜ方針転換したのか? 深層に迫った。〈全2回の1回目/つづきを読む〉

 指揮官は教え子の活躍に使命感を感じているようでもあった。

「アメリカでも日本人がホームラン王を獲る時代になりました。低反発バットに合わせた野球をやるのではなく、育成のことを頭に入れないといけない。私自身が変わらなければいけないと思った」

 花巻東が2回戦で二松学舎を破り、センバツベスト8進出を果たした。5回までに4点を先取。7回に反撃を浴びて1点差とされたが、すぐさま2得点を奪って振り切った。準々決勝では連覇を狙う健大高崎の前に1−9で力負けしたが、7年ぶりのベスト8進出は今後に期待を抱かせる戦いぶりだった。

細かい野球から豪快なフルスイングに

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 センバツでの3試合で花巻東打線が見せたのは、豪快に振り抜いていくスイングだった。思い切りよさあり、強さあり、スピードあり。単打で打率を狙うより、OPSを意識して取り組んでいると花巻東の指揮官・佐々木洋監督は言う。選手たちのスイングから、かつての花巻東の野球の面影は消えていた。

 菊池雄星(エンゼルス)、大谷翔平(ドジャース)というメジャーリーグのオールスタープレイヤー2人を輩出するなど、花巻東は投手育成に定評がある。投手力を中心にしぶとく守って勝つ野球でその名を轟かせてきた。

 投手陣の安定から、しっかり守り切ることで勝機を見出す。洗練されたディフェンス力の高さに加え、攻撃面では小技を駆使して少ないチャンスをものにしていく。終盤の粘り強さも専売特許だ。花巻東野球といえばそういう戦い方だった。スケールの大きな中心選手はいても、バックを支えるのは小技のきく選手ばかりだった。

なぜ野球を変えたのか?

 佐々木監督の長男である佐々木麟太郎を擁した2023年の夏も、確かにクリーンアップに破壊力はあったものの、それは個人のポテンシャルによる印象が強く、チーム全体の戦い方はそれまでの花巻東らしいものだった。だが、2025年現在の花巻東では、塁に出ればすかさず小技をきかせていくようなプレーは少なくなったように見える。

 佐々木監督はなぜ、野球を変えたのだろうか。

【次ページ】 メジャーで日本人がHR王を獲る時代に

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