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藤浪晋太郎30歳が告白する「ストレスで自律神経失調症のような症状に…」阪神5年目に異変“ストライクが入らなくなる”苦悩「歯がボロボロと崩れる夢を」
text by

中村計Kei Nakamura
photograph byNumberWeb
posted2025/03/29 11:05

2月末、キャンプ地のアリゾナで取材に応じた藤浪晋太郎(マリナーズ)
「アメリカでも敵地に行くとブーイングとか起こるんですけど、アメリカ人の場合はそれも1つのパフォーマンスというか、一種のノリでやっているところがある。けど、阪神ファンのため息って、本当のため息なんですよ。なので、甲子園は特に投げにくかったかもしれないですね。甲子園に行くの、嫌やなとか思ってました」
藤浪の異変…5年目から別人に
藤浪はルーキーイヤーの2013年に、いきなり10勝を挙げている。そして2年目は11勝、3年目は14勝と、年数を重ねるごとに勝ち星を伸ばしていった。ところが、4年目の2016年は7勝と初めて2ケタに手が届かなかった。その年のオフには初めて減俸も味わう。
成績が永遠に上がり続ける野球人生などあり得ない。うまくいかない年もある。4年目までの成績なら、そう言えた。山あり谷ありだ、と。
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ところが5年目以降の藤浪は、それまでの藤浪とはもはや別人だった。5年目は3勝、6年目は5勝にとどまる。監督が矢野燿大に代わった7年目、2019年も藤浪は依然として本来の自分を取り戻せずにいた。
3月12日、ナゴヤドームで中日とのオープン戦に登板し、4回をノーヒットで抑えた。にもかかわらず、藤浪の手には自信のかけらも残っていなかった。
「監督とコーチにどうやみたいな感じで聞かれて、一軍ではちょっとやれないと思いますみたいな感じで答えたんです。ただのラッキーで4回ノーヒットだったという感じだったので。到底、よくなるとは思えなかった。そうしたら、ちょっと下で時間をとるかみたいな感じになって」
「自律神経失調症のようになって…」
主役は、自ら舞台の降板を申し出た。
その年、藤浪は初めて開幕を二軍で迎えた。結局、一軍で投げたのはわずか1試合だった。当然、0勝に終わる。藤浪の野球人生の底だった。
今にして思うと、明らかに精神に異常をきたしていたという。
「自律神経失調症のようになって、寝れないというか、もう寝付きが悪いというレベルではなかったですね。首筋から背中のあたり、背骨のところが焼けるように熱くなったりして。強烈な張りと言えばいいんですかね。よくアニメとかで悪夢にうなされて取り乱したりするシーンがあるじゃないですか。夜中、『わっ!』って叫びながら起きたりだとか。あんなことがほんとにあって。あと、ストレスが溜まっているとき、人間って歯が抜ける夢を見るそうなんです。それは何回もありました。口の中で歯がボロボロと崩れるんです」
藁にもすがる思いで、その頃、いろいろなものを試した。目を調べ、歯を調べ、脳波も調べてもらった。メンタルクリニックや整体にも通った。だが、どこへ行っても異常は見つからなかったし、何の解決策も与えてくれなかった。