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藤浪晋太郎30歳が告白する「ストレスで自律神経失調症のような症状に…」阪神5年目に異変“ストライクが入らなくなる”苦悩「歯がボロボロと崩れる夢を」
text by

中村計Kei Nakamura
photograph byNumberWeb
posted2025/03/29 11:05

2月末、キャンプ地のアリゾナで取材に応じた藤浪晋太郎(マリナーズ)
元同僚・北條史也の証言
勝てなくなってからの藤浪が降板するパターンは決まっていた。突如、ストライクが入らなくなり、四球を連発してしまう。あるいは、デッドボールを与えてしまう。結果、打者の打ちやすいゾーンにボールが集まってしまい、痛打された。
その様子を間近で見ていたのは2012年のドラフト会議で藤浪に次ぐ2位で阪神から指名を受けた内野手の北條史也である。藤浪と北條はともに大阪の南部エリアで生まれ育った仲でもあった。
「1球(ボールが)抜けるとヤバいってなって、余計にまた抜けるんですよ。何勝もしているときも抜け球ってあったと思うんです。でも、いいときは気にせず次の球はドーンっていけた。その違いだと思うんです。ヤバいってなったときの藤浪は丸わかりなんです。マウンドに集まると『ぴよぴよ』ってなってるんで。『ごめん、ごめん』みたいな。ああ、メンタルに来てるんだな、って」
イップスなのか? 本人の見解
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藤浪はイップスなのか否か——。
この頃、藤浪のコントロールの悪さは一種の病のように捉えられ、業界内では何度となくそんな議論が交わされていた。
イップスとはごく簡単に説明すると、ゴルファーが30cmほどの短い距離のパットを目の前にすると体が硬直してしまうなど、これまで何も考えずにできたような単純な動作が突然、できなくなる症状のことだ。投手なら捕手に投げたつもりが、足下にボールを叩き付けていたという事例もある。
ただし、おそらくこの疑問に正確に答えられる人はこの世に一人もいない。誤解されがちだがイップスは病名ではなく、あくまで症状を指す言葉だ。したがって、そもそも「あなたは風邪だ」とか「あなたはガンだ」と確定診断できる種類のものではないのだ。
私自身、野球をやっていたときに短い距離のスローイングに恐怖心を抱くようになってしまった経験があったため、記者になってから、何度となくイップスの取材をし、何度となく記事を書いてきた。競技も野球だけでなく、ゴルフ、卓球、ボウリング、ダーツまで広げ、指がうまく動かせなくなったというギタリストに話を聞いたこともある。また、何人もの医師や研究者に当たった。