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「公立校で学んだ野球」が名門・横浜に…“松坂大輔5連続完投”センバツ優勝から27年、ベンチ入り17人出場「人間、みんな同じではありません」
posted2025/03/26 06:00

打ってはタイムリー、投げては4番手で沖縄尚学に勝利した横浜高校の奥村
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間淳Jun Aida
photograph by
JIJI PRESS
かつてのイメージとは異なる。だが、負けない強さは変わらない。横浜が沖縄尚学を8-7で下してベスト8進出。公式戦の連勝を17に伸ばし、新チーム結成からの無敗記録を継続した。
横浜は昨秋、27年ぶりに明治神宮大会を制した。27年前と言えば、甲子園で数々の記録を打ち立てた松坂大輔氏を擁した“歴代最強チーム”。絶対的エースだった松坂氏は神宮大会後のセンバツで、全5試合を1人で投げ抜いて優勝している。今のチームは否が応でも、当時のチームと比較される。
公立校で指導したときに学んだ全員野球です
あの時の横浜は、どっしりと構えて相手を真正面から受け止める横綱だった。
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一方、今のチームは多彩な引き出しで相手を退ける横綱。負けないところは共通しているが、タイプは違う。チームを率いる村田浩明監督は、こう話す。
「選手それぞれの良さを生かしてチームとして勝利する。公立高校で指導者をした時に学んだ全員野球です」
村田監督は2020年に横浜の監督に就任する以前、神奈川県立白山高校で監督を務めた。横浜には全国各地から能力の高い選手が集まってくるが、公立の学びを取り入れて特定の選手に頼らないチームづくりを進めてきた。
沖縄尚学戦は、まさに全員野球だった。ベンチ入り20人のうち17人が出場。投手も5人が登板する総力戦で、引き離しても食らいつく相手を振り切った。
横浜の先発マウンドには背番号10を着ける2枚看板の1人、織田翔希投手が立った。1回戦の市立和歌山戦では152キロを計測。松坂氏がマークした151キロの高校時代最速を超える球速で注目された。
この試合でも140キロ台後半の速球を連発した。だが、高めには手を出さず、ストライクゾーンをコンパクトにスイングする沖縄尚学打線に苦労する。5点リードの3回、2番・宮城泰成選手と4番・比嘉大登選手にファーストストライクの速球を捉えられ、2本の長打で失点。さらに、安打と死球を与えたところで降板となった。
準備は100%できていました
2番手の前田一葵投手は1人目の打者に二塁打を浴びて織田が許した走者を還したものの、後続を打ち取って何とかリードを保った。
相手に傾きかけた嫌な流れを食い止めたのが、4回から前田のバトンを受けた背番号13の山脇悠陽投手だ。