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「遅い球が多くて…」センバツ“飛ばないバット”時代に現れた浦和実“初見殺しサウスポー”って何者?「アベレージは125キロ」超変則エースの正体

posted2025/03/25 11:00

 
「遅い球が多くて…」センバツ“飛ばないバット”時代に現れた浦和実“初見殺しサウスポー”って何者?「アベレージは125キロ」超変則エースの正体<Number Web> photograph by JIJI PRESS

120キロ台の直球が中心ながら昨夏全国ベスト8の滋賀学園を完封した浦和実の石戸颯汰。「超変則サウスポー」はまさに初見殺しだった

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田口元義

田口元義Genki Taguchi

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JIJI PRESS


 右足を顔近くまで上げる。上体は少し猫背のように丸め、真上から左腕を振り下ろす。

 中学時代に習得したとされるピッチングフォームはダイナミックであり、どこかぎこちないようにすら見える。

 浦和実のエース・石戸颯汰にとっては、これが理想的な形なのだそうだ。

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 バッテリーを組む野本大智が感心する。

「あんなに足を上げても、ちゃんと投げられるのがすごいなって。球速はそんなに速くないですけどスピンが利いているんで、低めのボールもしっかり伸びてくるんです」

アベレージは125キロ…なぜ打たれない?

 ストレートの最速は130キロそこそこで、アベレージは125キロほど。とはいえ、監督の辻川正彦が「あのストレートはバッターからすれば刺されるんです」と唸るように、このボールを起点としたピッチングが最大の武器である。90キロ台から100キロ台前半のスローカーブやスライダーなどを織り交ぜ、そこにあのフォームである。バッターからすれば実に厄介なタイプのはずである。

 それを、昨秋に証明した。

 石戸が「自信になった」と頷くように、埼玉大会準々決勝で強豪の浦和学院を完封してから波に乗り、優勝に貢献した。関東大会では準決勝で横浜に敗れはしたが、この大会を制した名門相手に3失点完投と好投した。秋は8試合に登板して防御率0.72。自身のピッチングが、格上とされるチームにも通用することを世間に知らしめたわけだ。

 そして、今年のセンバツである。初戦の相手である滋賀学園は、昨夏の甲子園でベスト8に進出。秋も近畿大会初戦で優勝候補の大阪桐蔭を撃破した実力校だ。

【次ページ】 「初見だと対応が難しい?」「はい」

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