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森保一監督「こういう話をするのは恥ずかしいですね(笑)」歴代最高・勝率70%の指揮官が語る“ルーティン”…なぜ毎回「4度のおじぎ」をするのか?
posted2025/03/26 11:35

NumberWebのインタビューに応じた森保一監督(56歳)
text by

木崎伸也Shinya Kizaki
photograph by
Keiji Ishikawa
◆◆◆
勝負師には、勝利を手繰り寄せるルーティンがある。
2026年W杯アジア最終予選、中国対日本の前日のことだ。
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練習が始まる約15分前、森保一監督はひとりで出てくると報道陣に会釈しながらピッチ沿いをゆっくりと進み、バックスタンドを背にしてサイドライン際に背筋を伸ばして立った。
森保監督はスタジアム上方に目線を向けると、そのまま姿勢を保って動かなくなった。1分間くらいだっただろうか。森保監督は再び目線を下ろすと両手を体の横に添え、メインスタンド、左手側のゴール裏、右手側のゴール裏、バックスタンドに向かって順番に深々と頭を下げた。
無人の客席に向かって4度のおじぎ。まるで何かの儀式かのように。
いったい森保監督は何をしていたのだろう?
なぜ4度のおじぎをするのか?
日本サッカー協会に取材を申し込むと、1月中旬にJFA夢フィールドにおいてインタビューが実現した。森保監督は「サッカーの話とあまり関係ないですが大丈夫ですか?」と苦笑いしながらルーティンの秘密を明かした。
「選手とスタッフにケガなく、みんなが充実した時間をすごして健康で終わりますように。そう心の中で唱えました。このときだけじゃないですよ。必ずいつも4方向におじぎするわけではありませんが、すべての練習前に心の中で『ケガなく無事に終わりますように』と唱えています。試合のときもそうです。
スタジアムと練習場は神聖な場所。サッカーの神様じゃないですけど、そこにご挨拶っていう感じです。武道の世界には『礼に始まり礼に終わる』という言葉があるじゃないですか。そういう感覚です」
「試合のときもそう」という言葉通り、中国戦当日、確かに森保監督はピッチに出てくると4方向のスタンドに向かっておじぎをしていた。森保監督の願い通り、その日、日本代表にケガ人は出なかった。
「こういう話をするのは恥ずかしいですね(笑)」
そして、このルーティンにはさらなる裏話があった。