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森保一監督「こういう話をするのは恥ずかしいですね(笑)」歴代最高・勝率70%の指揮官が語る“ルーティン”…なぜ毎回「4度のおじぎ」をするのか?
text by

木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byKeiji Ishikawa
posted2025/03/26 11:35

NumberWebのインタビューに応じた森保一監督(56歳)
「礼に始まり礼に終わる」のは日常生活も同じなのだという。
「1日の始まりと終わりに空を見ながら、心の中でつぶやくんです。たとえば夜、寝る前に空を見ながら1日の振り返りをしたあとに、『充実した時間を過ごさせて頂きありがとうございました。家族、サッカーファミリー、見守ってくださるすべての人に感謝します』という内容を唱えます。朝起きたらまた空を見上げて『新たな朝を迎えさせて頂き、ありがとうございました』と口にする。
こういう話をするのは恥ずかしいですね(笑)。サッカーをできているのは平和な世の中があるおかげ。このルーティンを行う際、『世界が平和でありますように』という願いも常に心の中で言葉にしています。
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カタールW杯のときも朝晩欠かさず、このルーティンを続けていました」
ここで興味深いのはサッカーの神様にご挨拶しながらも、「勝利」をお願いしているわけではないということだ。あくまで口にするのは、選手やスタッフの健康と感謝のみである。
「僕の好きな言葉のひとつに、宮本武蔵の『我、神仏を尊びて、神仏を頼らず』(仏神は貴し、仏神をたのまず)という格言があります。神にすがらず、自分の手で勝利を掴み取るという意味です。
僕もケガがないようにといった健康については神様にお願いするのですが、勝利についてはお願いしません。自分たちの力で道を切り開きたいんです」
森保監督の“ツキ論”「なぜ1mのシュートを外すのか?」
話の角度が少し変わるが、勝負の世界には「徳を積む」という考え方もある。
花巻東高校野球部の佐々木洋監督が大谷翔平(ロサンゼルス・ドジャース)ら教え子に「ゴミを拾って、人が捨てた運を拾ってツキを呼ぶ」と教えたように、善い行いをすることで勝負運を引き寄せるという発想だ。
上に書いたように、森保は勝利を神にすがらない。ただし、ぎりぎりの勝負の中で、ツキについてはいろいろと感じるものがあるようだ。
「サッカーほど運の要素がわからないスポーツはないですよね。たとえば、シュートの成否。とてつもないロングシュートが決まることもあれば、ゴール1メートル前の誰でも決められそうな場所から外してしまうこともある。確率ってなんだろう、勝ち負けはどうやって決まるんだろう、とよく考えさせられます。