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羽生善治と“藤井聡太の師匠”杉本昌隆が降級…順位戦衝撃の結末、さらに元A級棋士の懸念は三段リーグの異常性「昇段倍率が競争原理を超えている」 

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田丸昇

田丸昇Noboru Tamaru

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posted2025/03/27 06:01

羽生善治と“藤井聡太の師匠”杉本昌隆が降級…順位戦衝撃の結末、さらに元A級棋士の懸念は三段リーグの異常性「昇段倍率が競争原理を超えている」<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

会長職と兼務する羽生善治九段は、来期順位戦をB級2組で戦うのか

 糸谷八段は「怪物」の異名が付いたほど強く、14年に初タイトルの竜王を獲得した。A級に5期連続で在籍。22年度に降級したが、今期は2年ぶりに返り咲いた。2月に叡王戦準決勝では藤井七冠を破っている。

 B級2組への降級者は、4勝8敗の羽生善治九段(54)、三浦弘行九段(51)、3勝9敗の山崎隆之九段(44)。羽生九段は1996年に「七冠制覇」、2017年に「永世七冠」、獲得タイトル99期という輝かしい実績を挙げているレジェンドだ。しかし21年度にA級から降級。今期は最終戦で勝てば残留したが、敗れて降級が決まった。

 永世称号を有する大棋士が降級した場合、進退が注目される。羽生九段の選択肢は、(1)B級2組に34年ぶりに在籍、(2)フリークラス転出、(3)引退。3月中に判断するとのことだが、谷川浩司十七世名人(62)のように(1)を選んで再起を図ると推測する。

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 B級1組は20年度から降級枠が2人から3人に増えた。今期を含めた延べ15人の降級者のうち、大半が40代・50代のタイトル経験者と元A級棋士。若い世代が台頭する影響をもろに受けている感じだ。

叡王・伊藤匠がB級1組昇級

 【B級2組】

 B級1組への昇級者は、9勝1敗の服部慎一郎・新七段(25)、8勝2敗の青嶋未来・新七段(30)、伊藤匠叡王(22)。服部と青嶋は、最終戦(3月5日)の1カ月前の9回戦で昇級をすでに決めていた。

 服部七段は3期連続の昇級で、9勝1敗(C2)、10勝0敗(C1)、9勝1敗(B2)と圧倒的な成績だった。今年度の勝率も一時期は9割台に達し、現時点で唯一の8割台を保っている。

 青嶋七段は前期に同成績順位下位で昇級を逃した。今期は4回戦で全勝の棋士に勝って1敗を守ったことで昇級争いに入れた。来期は服部七段と初対戦できるのが楽しみだという。伊藤叡王は最終戦で昇級候補の丸山忠久九段(54)に勝ち、2期連続で昇級した。来期は実力者の12人と総当たりで戦えるのが楽しみだという。

“藤井の師匠”杉本が引いてしまった貧乏くじ

 C級1組への降級者は、5勝5敗の杉本昌隆八段(56)、2勝8敗の中川大輔八段(56)、0勝10敗の高崎一生七段(38)。いずれも2回目の降級点で降級が決まった。

 私こと田丸九段は棋士になって50年以上で、順位戦で指し分けの成績なら降級点に該当しないと思っていた。しかし何年か前に改定されたようで、成績よりも順位を優先するという。藤井名人の師匠で知られる杉本八段は最終戦で負けても、4勝5敗の6人の棋士のうち1人でも負ければ残留できたが、6人全員が勝ったことで、5勝5敗ながら順位最下位によって降級が決まった。確率が約1%という貧乏くじを引いてしまった。

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