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藤井聡太八冠復活を阻止+A級復帰「平成の怪物」糸谷哲郎36歳が今、再びアツい「国立大学院卒…父も東大卒」「哲学で人生の究極の価値を」
posted2025/03/13 06:00

藤井聡太七冠の叡王戦挑戦阻止に、順位戦A級復帰。今、糸谷哲郎八段が絶好調だ(2023年撮影)
text by

田丸昇Noboru Tamaru
photograph by
Hiroshi Kamaya
2月25日に第10期叡王戦準決勝で藤井聡太七冠(竜王・名人・王位・王座・棋王・棋聖・王将=22)と糸谷哲郎八段(36)が対戦した。藤井は対戦成績で8勝0敗と圧倒していたが、糸谷が厳しく攻め込んで初勝利を挙げた。その結果、藤井は伊藤匠叡王(22)への挑戦の可能性がなくなり、年内の「八冠復活」も消えた。
来期順位戦A級復帰も決めた糸谷は若い頃に「怪物」の異名がついた。強烈な将棋の強さと型破りの物言いで注目された。そうした盤上盤外のエピソードを田丸昇九段が紹介する。【棋士の肩書はいずれも当時】
デビュー戦、相手棋士が「強すぎる。怪物だ!」
糸谷は1988年10月5日に広島県広島市で生まれた。5歳で父親から将棋を習うと、市内の将棋クラブに通って腕を上げた。98年に森信雄七段の門下で関西奨励会に6級で入会。同年代の新入会員には、佐藤天彦九段、広瀬章人九段、及川拓馬七段、戸辺誠七段、船江恒平七段らの棋士がいる。
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糸谷は三段リーグに2004年度後期から参加すると、3期目に14勝4敗で1位の成績を挙げ、06年4月に17歳で四段に昇段して棋士になった。三段時代に新人王戦に出場すると5連勝し、決勝三番勝負で横山泰明四段に2連勝して06年10月にプロ公式戦で初優勝した。
糸谷四段は06年5月にデビュー戦で若手精鋭の六段に勝つと、相手の棋士は終局後に「強すぎる。怪物だ!」と叫んだという。その一言がきっかけとなり、「怪物」の異名がついた。
それは盤外での発言にも及んだ。
06年12月の新人王戦の表彰式で、糸谷は「現在の将棋界は斜陽産業。僕たちの世代で立て直さなければならない」と、異例の挨拶をして話題になった。
「哲学で人生の究極の価値を」語録と国立大の大学院へ
高校3年のときに受けたインタビューでは、独自の視点と大胆な物言いで次のように語ったこともある。
「読書好きの祖父母の影響で、幼稚園の頃からアガサ・クリスティー、司馬遼太郎、小松左京などの小説を読みました」
「本だけの知識の子どもなので、小学校では扱いずらかったと思います」
「奨励会時代に記録係を務めたことはなく、その価値を感じていません」
「人生の究極の価値を見つけたいです(京都大学哲学科を目指す理由について)」「生意気です。論理的な説教でないと反論します」
「女性に興味はありません」
「ニーチェの言葉のように、神は死んでいると思います。最終的には自分自身が神なのかも……」