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羽生善治と“藤井聡太の師匠”杉本昌隆が降級…順位戦衝撃の結末、さらに元A級棋士の懸念は三段リーグの異常性「昇段倍率が競争原理を超えている」
text by

田丸昇Noboru Tamaru
photograph byNanae Suzuki
posted2025/03/27 06:01

会長職と兼務する羽生善治九段は、来期順位戦をB級2組で戦うのか
この規定で極端な例を挙げると、A級で1人が9戦全敗し、残り9人が5勝4敗ならどうなるか……。「パラマス方式」で名人戦の挑戦者を決めるが、順位最下位の棋士は挑戦者争いで脱落した時点で降級が決まる。
新世代の19歳・藤本渚が新六段に
【C級1組】
B級2組への昇級者は、9勝1敗の斎藤明日斗・新六段(26)、藤本渚・新六段(19)、8勝2敗の佐藤和俊七段(46)。
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斎藤は最終戦(3月4日)の2カ月前の8回戦で昇級をすでに決めていた。藤本と佐藤は最終戦で敗れると、順位差で昇級を逃す可能性があったが、いずれも勝って自力で昇級した。斎藤六段は同門の本田奎六段(27)と伊藤叡王にタイトル挑戦で先を越されたが、2人から刺激を受けて昇級を果たした。サウナ好きで、対局前日は必ず入って心身を整える。
藤本六段は師匠の井上慶太九段(61)の好成績(今期は7勝3敗)が励みになって頑張れたという。佐藤七段はC級2組で15期も足踏みした遅咲きだが、着実に実力を伸ばしている。2017年にはNHK杯戦で準優勝した。
C級2組への降級者は、3勝7敗の真田圭一八段(52)、阪口悟六段(46)、窪田義行七段(52)、北島忠雄七段(59)、2勝8敗の千葉幸生七段(46)、金井恒太六段(38)。真田八段は1997年の竜王戦で挑戦者になった実績がある。2期目の順位戦でC級1組に昇級して以降は、今期まで31期連続で在籍していた。
C級2組でも昇級を巡るドラマが
【C級2組】
C級1組への昇級者は、9勝1敗の上野裕寿・新五段(21)、8勝2敗の岡部怜央・新五段(25)、池永天志六段(31)。最終戦(3月11日)を迎えた時点で8勝1敗だった上野、池永、山本博志五段(28)は自力で昇級できたが、上野以外は敗れた。
上野五段は初参加した順位戦の1回戦で敗れたが、5回戦で全勝の棋士に勝って昇級争いに入れた。今期に昇級を逃すと、来期以降に新しい棋士たちに飲み込まれてしまう危機感があったという。
岡部五段は今年度ランキングでは、対局数・勝利数で1位で、勝率も7割台の2位。そんな好調さと、別の昇級候補の敗戦で昇級できた。池永六段は瀬川晶司六段(55)に168手もの激闘の末に敗れたが、別の昇級候補の敗戦で昇級できた。
山本五段は佐々木大地七段(29)との対局で得意の三間飛車を用いて奮闘したが、156手もの激闘の末に敗れて昇級を逃した。終局後に「自分の力をすべて出し切った。悔しいが一から将棋を勉強して少しでも強くなりたい」と語ると、ネット上には《ヒロシ、がんばれ》のコメントが数多く載った。佐々木七段は棋聖戦と王位戦でタイトル挑戦の実績があるが、順位戦はなぜか勝負運がない。過去に8勝2敗の次点が2回あり、今期も同成績で次々点だった。