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「将棋だって水泳にプラスになる」世界水泳で金メダル→パリ五輪で予選落ち…“日本競泳界のエース”本多灯(23歳)が挫折を超えて気づいた「真実」 

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田坂友暁

田坂友暁Tomoaki Tasaka

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posted2025/03/23 11:04

「将棋だって水泳にプラスになる」世界水泳で金メダル→パリ五輪で予選落ち…“日本競泳界のエース”本多灯(23歳)が挫折を超えて気づいた「真実」<Number Web> photograph by JIJI PRESS

昨年2月のドーハ世界水泳で金メダルを獲得し、夏のパリ五輪はまさかの予選落ちと天国と地獄を経験した本多灯。その経験から何を学んだのだろうか

 実は泳ぎながら将棋のことを考えるのも、水泳に対して気持ちの余裕を持つことにつながっているという。

 練習中のタイムが遅かったとき「これをこうしないと」「あれをやらないと」「もっと頑張らないと」と水泳のことばかり考えていると、ただただ自分を追い詰めるばかりになってしまう。

 身体ではきつい練習を頑張ることはもちろんだが、頭では別のことを考えられるようになると、「あ、今気持ちに余裕あるな」と、冷静になれる瞬間ができると本多は言う。

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「それって、一歩引いて自分の状況を見て把握している証拠だと思うんです。そう考えれば、将棋だって間接的に水泳に対してプラスになっている部分があるわけです」

 本多は、水泳を将棋に見立ててこう話す。

「将棋は王手に至るまでにどうやって駒を動かすかを考え、戦略を練って、修正しながら実践して、守って攻める。それが結果として王手になる。将棋の守りを固める、というのは、自分に足りないところを知る必要があります。将棋の攻めは、自分の武器は何かを判断することが必要です。将棋は、常に冷静に戦局を見て自分がどうすべきかを判断して、王手に導いていく。水泳に王手はありませんが、王手に至る過程は、同じですよね」

 この冷静な判断力こそ、2025年という1年で学び、習得したいものなのである。

「ひとつのことしかできない」という思い込み

 ゴルフや将棋も含めて今、本多にはやりたいことが無数にある。

 水泳以外の楽しみを見つけ出すことなど、今まではなかったことだった。なぜなら「僕はずっと自分のシングルタスクの人間で、ひとつのことにしか自分のキャパシティを割けない」と思っていたからだ。

「自分が持っているキャパシティは、全部水泳に割きたかったので、とにかく水泳のことばかり考えていました。でもパリ五輪後に一度水泳から離れて、新しい世界を知って、水泳以外にたくさんやりたいこと、水泳以外のことを考える時間が増えました。でも、実際は自分のキャパシティのなかで水泳に割いている割合があまり変わっていないことに気づきました」

【次ページ】 水泳「以外」のことから学ぶ楽しさ

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