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「僕は生意気だったかと」休み返上シュート特訓…“W杯最速切符の原動力”FW小川航基を変えた青春の日々「ハチ君、イイっすか?」ジュビロ先輩GKに感謝
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ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph byKiichi Matsumoto
posted2025/03/27 11:51

日本代表でゴールを奪う一方で、様々な思いを自らに持つ小川航基。そんな彼の土台になっているものとは
そうやって主張する姿勢は海外ではなくてはならないものだし、ストライカーらしいエピソードのようにも感じる。一方で、強烈な自己主張とは相いれないような姿勢も持ち合わせているところに小川の魅力はある。
その魅力を理解するヒントとなるのが、かつて行なわれた本田圭佑との対談で、Jリーグ前チェアマン村井満が挙げた大成する選手の傾向だ。本田、岡崎慎司、長友佑都ら1986年生まれの選手のJリーグ新人研修でのデータを見ると、海外で活躍した選手には2つの資質があることを村井は発見したという。
それが「主張力」と「傾聴力」だ。
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自分の考えを主張する力と、周りからの意見に耳を傾けられる力。ともすれば相反するような2つの資質を“同時に”持っている選手が大成する、というのが村井の見立てである。
「ハチ君、イイっすか?」「おー、えぇで!」
小川は若い頃から「鼻につく」と思われるリスクがあると理解しながらも、自らの考えを主張してきた。ただ、彼はそれだけで終わらなかった。ストライカーとしての能力を上げるため、先輩からのアドバイスにしっかり耳を傾けてきた。
若い時の生意気な一面を自認する一方で、小川はこうも語っている。
「僕は幸運なことに素晴らしい先輩たちに恵まれてきたので……」
あるときは先輩をピッチへ“呼び出し”、あるときは先輩からのアドバイスを脳の片隅に大事に置いて、それらを成長の糧にしてきた――。
例えば、高卒で入団してから、およそ5年半を過ごしたジュビロ磐田に在籍していたときのこと。小川と“ある先輩”はいつしか、簡単な言葉を交わしてからピッチで汗を流すようになった。
「ハチ君、ちょっとイイっすか?」
「おー、えぇで!」
そう答えてくれていたのは、ゴールキーパーの八田直樹だ。高卒で入団してから一度も移籍せずに19シーズンを戦い抜き、公式戦200試合に出場したレジェンドだ。ただ、キャリアを通して見れば、出場しない試合の方がはるかに多かったという苦労人でもある。
僕は生意気だったと思うんですよね
そんなレジェンドと小川は、チームの全体練習後はもちろんのこと、休みの日でも、シュートを通じてコミュニケーションを取り続けた。