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箱根駅伝あの“伝説の1区”から3年「兄的にはドキドキしちゃった」吉居兄弟のカワイイ関係…弟・吉居駿恭も“大逃げ”成功、中央大・藤原監督が語る「兄弟の差」
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byAFLO
posted2025/01/02 20:19
箱根駅伝1区。序盤で飛び出し、区間歴代4位となる1時間1分07秒。区間賞を獲得した中央大・吉居駿恭(3年)
兄の吉居大和は、2022年大会の1区で弟と同じように集団から飛び出し、そのまま押し切った。兄の大和は、その時の判断をこう話していた。
「予定通りということはなくて、集団のペースが遅かったので、『だったら自分のペースで行こう』と思って、飛び出したんです」
弟と同じである。藤原監督は、この時の兄のレースをこう振り返る。
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「まったく指示していませんでした。ああ、大和が行ったという感じでしたね(笑)。大和はポイント練習でも、気持ちが乗ってしまうと、想定以上のタイムで走ってしまうことがあります。それはリスクにもなるので、ヒヤヒヤするんですけど……。抑えるよりも、自分のペースで気持ちよく行かせた方が良いという判断でした。弟の駿恭も同じように、感覚的なところがあります」
自分の感覚。「遅い」と感じれば、自分で押してしまえ。そんな潔さが吉居兄弟の魅力だ。
藤原監督が語った「兄と弟の違い」
今回の弟・駿恭の走りについて、藤原監督は「今回、何パターンかレースの想定をしていましたが、そのうちのひとつではありました」と話していた。
晴天の日の独走、1時間01分07秒の区間賞。そして2位の駒澤大の帰山侑大に1分32秒、国学院大の野中恒亨に1分40秒と、有力校に大差をつけての1区区間賞は、中大にとって最高のロケットスタートとなった。
それにしても、吉居兄弟は中大にとっての至宝だ。
同じ1区、同じような展開で区間賞を獲得したとはいえ、当然のことながら持ち味は違う。藤原監督によれば、「大和は将来的にマラソンが向いていると思いますし、駿恭はトラックで勝負できる瞬発力があります」と語る。
私も幾度も兄弟の話を聞いてきたが、弟・駿恭には独特の感性があると思う。
昨季、駿恭はトラックで好タイムを出したものの、それが駅伝にスムースに移行しなかった。駿恭はその理由をこう説明してくれた。