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プロ野球PRESSBACK NUMBER
「上沢直之ソフトバンク入り」は“恩知らず”か? 野村克也監督の“右腕”に聞いた「ストーブリーグの論点」「メジャー挑戦はもう止められない」
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph byKYODO
posted2024/12/25 11:47
日本ハムからこんなに盛大に送り出されたのに…
松井氏は最後に、選手獲得を巡る今後の変化についても触れた。一つは今季限りでNPBが主催終了を検討している「12球団合同トライアウト」だ。今年は11月14日に行われた、参加した45人のうち、NPB球団へ入団が決まったのは鈴木康平投手(巨人戦力外→ヤクルト育成)ら3人でいずれも育成契約だった。
“有名無実”だったトライアウト
「対NPBという意味では今の形式のトライアウトは全く意味がない。12球団の編成担当は年間通してファームの試合や練習もくまなく見ていますしデータも豊富にありますから、トライアウトで判断するということはあり得ないんです。ただ、戦力外選手の獲得に動くのはトライアウト終了後という選手会との申し合わせがあったために、すでに交渉がまとまっているのに発表できないというような不自然な形になっていた。
そもそもプロ野球というのは毎日が勝負で、特にファームで正念場に立っている選手は日々結果を出していくことが全てですよね。それをトライアウトを終えて“やり切った”と踏ん切りをつけるというのもおかしな話です。来年以降は形が変わって独立リーグに向けての窓口的な意味合いになるでしょうから、少し枷が外れてあるべき形になっていくのだと思います」
「現役ドラフト」はさらに発展
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逆に12月9日に第3回が行われた「現役ドラフト」については今後さらに拡大していくという見立てだ。今回はドラフト1位入団の3選手を含む13人の移籍が成立。第1回でDeNAから中日に移籍した細川成也や、ソフトバンクから阪神に移籍した大竹耕太郎、第2回でソフトバンクから日本ハムに移籍した水谷瞬ら、環境が変わることで大ブレークを果たした選手も現れた。
「現役ドラフトは大賛成。これはいい制度でしたね。去年、今年と現役ドラフトからちゃんと戦力になる選手が出てきた。水谷のようなケースがあることで、選手も前向きに捉えられるし、球団にとっても可能性を高める制度になっていくと思います」
補強の形は様々に変化しながら、今後も変わらずオフシーズンのプロ野球ファンを一喜一憂させそうだ。
〈田中将大編からつづく〉
松井 優典(まつい まさのり)
1950年6月26日、和歌山生まれ。星林高から1969年にドラフト3位で南海入団。捕手から内野手に転向し、1975年にヤクルトへ移籍。1979年シーズン限りで現役引退し、野村克也監督のもとで二軍監督、チーフコーチなどを務めた。99年には野村監督とともに阪神へ移りヘッドコーチなどを務めた後、編成担当を任された。2005年に楽天入りし、初代二軍監督に。その後はヤクルトで二軍育成コーチや編成部長を歴任した。現在は野球解説者。