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「僕はもうここまでなのかな」宇野昌磨が語った“失意の底”「僕のスケート人生で挫折という言葉を使うなら…」心を変えたコーチの言葉<NumberTV>
posted2024/12/26 11:04
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph by
Asami Enomoto
【初出:Number1111号[挫折地点を語る]宇野昌磨「ステファンのために、もう一回」より】
スケート人生を変えたシーズン
宇野の生き方に影響を与えてきたランビエルコーチ。そんな2人がタッグを組んだのは、'19年の終わりだった。そのシーズン、宇野は恩師・山田満知子、樋口美穂子の元を離れ、コーチ不在のまま'19年GPフラン ス杯で自身最低の8位となった。
「僕のスケート人生で、挫折という言葉を使うならこの時。初めて『僕はもうここまでなのかな』って思った試合でした」
失望の底にあった彼が連絡したのは、シーズン初戦のとき、リンクサイドでのサポートを臨時で申し出てくれたランビエルコーチだった。当時のことをランビエル自身はこう振り返る。
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「昌磨をスイスに歓迎して、彼のモチベーションを高めたいと思いました。練習に喜びを感じてほしいと思い、細かなテクニックではなく、精神面を重視してサポートしました」
その思いは、宇野の心を変えた。
「僕は英語が分からないですが、『スケートを嫌になってほしくない』というステファンの気持ちはすごく伝わってきました。結果を求めるよりも『いいスケート人生だったな』って思えるスケートをしよう、というマインドになっていきました」
「挫折は成功へのプロセスになるのかな」
スケート人生最大の挫折地点で出会い、再び笑顔をくれた人。そして世界王者へと導いてくれた人。最後の演技となった’24年世界選手権のフリーはミスがあり4位になったが、やはり、演技を終えた瞬間にコーチを振り返った。
「僕らしいな、と思います。最後が自分の最大の華やかな舞台ではなかった。でもステファンも僕も、ここで満足しきっていたら、スケートは『もういいかな』と思っていたかもしれない。こういう終わり方だったのは『まだ僕がスケートを続けるということなんだ』と解釈しました」
新たなステージへと向かう自分に、言い聞かせる。
「挫折って、そこで終わってしまうと失敗で終わってしまいますが、挫折した経験を自分の人生のどこかで生かすことによって、その挫折は成功へのプロセスになるのかな、と僕は思っています」
最後の演技を終えた瞬間に交わしたまなざしを胸に刻み、師弟は次のステージへと進んでいく。
<前編から続く>
【番組を見る】NumberTV「#11 宇野昌磨 僕はもう、ここまでかな。」はこちらからご覧いただけます。