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ジャッジ2人がドヘニー支持も…井上尚弥は4回までにインプット完了! 元世界王者・飯田覚士が「びっくりした」王者・井上の“揺さぶり返し”―2024下半期読まれた記事
posted2024/12/24 11:01
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Hiroaki Yamaguchi
2024年の期間内(対象:2024年9月~2024年12月)まで、NumberWebで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。井上尚弥部門の第2位は、こちら!(初公開日 2024年9月6日/肩書などはすべて当時)。
挑戦者ドヘニーの慎重なスタート
丁寧に、しっかりとボクシングを組み立てる――。
9月3日、東京・有明アリーナ。4団体統一世界スーパーバンタム級王者“モンスター”井上尚弥は、元IBF同級王者のTJ・ドヘニー(アイルランド)を7回16秒でTKO勝利を収めて防衛を果たした後、リング上でこの試合のテーマを口にした。
ダウンシーンがなく、挑戦者が腰を押さえて途中棄権するというよもやの展開は派手なKO勝利を期待したファンからすればひょっとすると物足りなかったかもしれない。だが、「丁寧な構築」という視点に立てば、ディフェンシブに戦うサウスポーのドヘニーに対してジリジリと追い詰めていくモンスターの恐ろしさが浮かび上がってくる。
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WOWOW「エキサイトマッチ」の解説を務めるなど海外のボクシングにも精通する元WBA世界スーパーフライ級王者・飯田覚士氏にその「丁寧」を紐解いてもらうべく、試合の論評を再び依頼した。開口一番、「パーフェクトな内容」と言い切った。
“パワー”の異名を誇り、当日に11kgも体重を戻してきたドヘニーの強打を井上陣営はまずもって警戒していた。1ラウンド、序盤に滅法強いはずの挑戦者が思った以上に出てこない。ただドヘニーの意図的な作戦というより、むしろ井上がそうさせたと飯田の目には映っていた。
一分の隙も見せなかった井上尚弥
「ドヘニー選手の武器は(昨年10月のWBOアジアパシフィック王座戦で)ジェフ・ラミド選手を1ラウンドでダウンを奪ったように、ツーステップで当てていく左ストレートです。挑戦者からすればどう使っていくか、逆に尚弥選手からすればどう封じるか。僕はまずそこに注目しました。尚弥選手はさすがでしたね。距離を詰めて、数センチ単位でプレッシャーをかけ続けて気づいたらロープに追い詰めている、と。あれではツーステップは踏めません。(王者からすれば)左を合わせてつぶすか、それともバックステップで下がりきるか、と想像していたのですが、なるほどそうやって封じるのかと思いました。尚弥選手が何度か強いパンチを打ったのも有効的でした。1発もらったらやばいと、相手にインプットさせたわけですから。それでも1ラウンドの最後のほう、ドヘニー選手はステップから左を当てようと試みましたが、それも出鼻をくじくような形で左ジャブでも潰して。一分の隙すら見せなかった尚弥チャンピオンのスタートでしたね」