甲子園の風BACK NUMBER
「あれを見て、プロではやっていかれへんと…」あの星稜・奥川恭伸を倒して日本一…履正社“伝説の主将”にプロを諦めさせた「衝撃の強肩」の持ち主
posted2024/12/26 11:07
text by
沢井史Fumi Sawai
photograph by
(L)JIJI PRESS、(R)Hideki Sugiyama
2018年の夏、高校野球北大阪大会の準決勝。
この年、春夏連覇を目指していた大阪桐蔭と履正社の試合は6回まで互いにゼロ行進が続いていた。
両チームとも3安打ずつ放つも、大阪桐蔭打線は履正社先発の浜内太陽を前に4度の併殺を喫していた。履正社からすれば“してやったり”の展開だった。
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だが、均衡は7回に破れた。先頭の藤原恭大(現ロッテ)が三塁打を放ち、根尾昂(現中日)、青地斗舞の適時打などで3点を先制。ところがその裏、履正社は1点を返すと、さらに8回裏には西山虎太郎の適時打などで3点を挙げ、試合をひっくり返したのだ。
大阪桐蔭「最強世代」を9回2死まで追い詰め…
残すは9回の攻撃のみ。履正社は勝利まであと1アウトまでこぎつけた。だが、その最後の1つのアウトが遠かった。8回から再登板した先発の浜内には余力は残っておらず、2死から4連続四球で1点を失った。同点となり、最後は山田健太(現日本生命)の適時打で勝ち越され、4-6で屈した。
キャッチャーだった野口海音は振り返る。
「浜内さんは自分のボーイズ(松原ボーイズ)の1年先輩で、その夏を終わらせてしまったことが本当に悔しかった。最後に勝ちきれなかったことが、もう……。僕は今まで野球の試合で負けても、“クソッ”って思ったことがなかったんです。あの試合は初めて、心の底から“クソッ”ってなりましたね。桐蔭を倒す。履正社に入ったのは、それも目標だったので」
根尾や柿木蓮の投球に圧倒され、自身も3打数無安打。「とにかく柿木さんのボールが速かった」と脱帽するしかなかった。