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「信じられない」箱根駅伝で“伝説の20人抜き”はなぜ起きたのか? 4年間の箱根路で「合計50人抜いた」ケニアのごぼう抜き男を覚えているか
posted2025/01/02 11:02
text by
工藤隆一Ryuichi Kudo
photograph by
AFLO
第101回を迎えた箱根駅伝。同大会の大きな見どころの一つに、ひとりのランナーが複数人のランナーを追い越し、順位を押し上げる“ごぼう抜き”がある。1区間で20人を抜いた伝説のランナーなど、ごぼう抜きの歴史を『箱根駅伝100年史』(KAWADE夢新書)から抜粋して紹介する。《全3回の第3回/第1回、第2回も公開中です》
「信じられない」20人の“ごぼう抜き男”が誕生
テレビで箱根駅伝を観るときの楽しみのひとつが「ごぼう抜き」である。ひとりの選手が次から次へと先行する選手を追い抜いていく。
当然、実況しているアナウンサーも興奮気味に「もう止まらない!これで9人、さあ、あと何人抜かすのか!」などと絶叫する。1月2日、午前9時過ぎから10時過ぎまで、と時間的にもちょうどいい。だから2区はテレビの画面から目が離せない。ひょっとしたら、難所の権太坂でアクシデントがあるかもしれないと、少しは思っているので、なおさらである。
ごぼう抜きは21世紀に入った2003(平成15)年の第79回大会から急に増えだした。それまでの11人以上のごぼう抜きは、1974(昭和49)年の第50回大会で東京農大の2区を走った服部誠の12人抜きがひとり抜きん出て目立っていた。
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ところが、第79回大会で順天堂大の中川拓郎が15人抜き、関東学院大の尾田賢典が12人抜きを演じると、以後の大会で徐々に増え始めてくる。2008(平成20)年の第84回大会では日本大のギタウ・ダニエルが15人抜き、東海大の伊達秀晃が13人抜きをやってのけた。
そして翌2009(平成21)の第85回大会では、信じられないごぼう抜きの「新記録」が誕生した。演じたのは前年15人抜きの「実績」を持つ、日本大のケニアからの留学生ダニエルだった。なんと20人抜きである。