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「信じられない」箱根駅伝で“伝説の20人抜き”はなぜ起きたのか? 4年間の箱根路で「合計50人抜いた」ケニアのごぼう抜き男を覚えているか
text by
工藤隆一Ryuichi Kudo
photograph byAFLO
posted2025/01/02 11:02
ギタウ・ダニエル(日大)が4年間の箱根駅伝で抜いたランナーの合計はなんと50人
ダニエルは4年間の箱根駅伝で「合計50人を抜いた」
ダニエルはこのとき3年生。3区を走った1年生のときは4人、2区を走った2年生と4年生ではそれぞれ15人と11人を抜いているので、4年間でじつに50人を抜いた計算になる。さらに、出雲駅伝で11人、全日本大学駅伝で21人を抜いているので、4年間の合計は何と82人。まさに「ケニアのごぼう抜き男」といっても差し支えない働きを演じたのだった。
この第85回大会の2区でのごぼう抜きは、けっしてダニエルひとりだけではなかった。中央学院大の木原真佐人は11位から8人抜きで3位に、東京農大の外丸和輝は10人抜きで14位から4位に、駒澤大の宇賀地強も19位から11人抜きで8位にと、それぞれ順位を押し上げている。
ごぼう抜きは第85回大会以降も、以前にも増して高い確率で出現するようになる。2011(平成23)年の第87回大会では、やはり2区で、東海大の村澤明伸(現・SGホールディングス)が、20位から3位に躍進する17人抜きを演じ、さらに明治大の鎧坂哲哉(現・旭化成)も11人抜き。珍しく3区で山梨学院大のオンデイバ・コスマスが11人抜きしている。
なぜ、ごぼう抜きが出現する頻度が上がったのだろうか。さまざまな要因が考えられるが、箱根駅伝に出場する各大学のレベルが底上げされ、競争自体が拮抗してきたことが考えられる。とくに、翌年のシード権を獲得できるかどうかが決まる10位前後の争いが苛烈を極めてきたのが引き金になっているようなのだ。《第1回、第2回も公開中です》