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「ミトマにドウアン、クボ…今は欧州で韓国以上の評価だ」トルシエが“世界トップ級”と断言「日本サッカーのエコシステム」その正体とは
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byKiichi Matsumoto
posted2024/12/15 11:05
アジアで圧倒的な実力を見せている日本代表。トルシエは“強豪国並み”のエコシステムを構築したと高く評価する
「稲本潤一がアーセナルやレンヌに移籍し、中村俊輔がセルティックに移籍したときのことを覚えているだろう。何人かの選手がそうやって活躍し、日本人は彼らに誇りを抱いたが、人数はとても少なかった。南米やアフリカの選手ほどに尊重され、評価されることもなかった。
今日、そうしたすべてが変わった。今では日本人選手の獲得は、ブラジル人やアルゼンチン人、コロンビア人、コートジボワール人、セネガル人を獲得するのと同じ意味を持つ。日本人への評価は以前とはまったく違う。
日本人選手の態度にもそれは見て取れる。伊東純也や中村敬斗がスタッド・ランスにやって来たとき、彼らは中心選手として働くことを期待され、彼ら自身がそのことを理解してそれだけの責任を背負った。期待に応えるだけの働きをする責任が彼らには課せられた。
以前はそうではなく、日本人にチャンスを与えるという、贈り物の意味合いが強かった。この20年間でそこが全く変わった」
規律、連帯、欧州での活躍…エコシステムができた
――攻撃的な選手で言えば、あなたは先ほど「三笘薫、堂安律、久保建英も素晴らしい選手だ」と語っていました。そうなったのは日本の育成の成果であり、リーグや協会が強固な組織を築き上げたことの結果であるのですね。
「とりわけ若手育成の成果だ。日本社会には規律があるし、日本人は強い連帯意識を持っている。また日本の指導者たちは高い能力を持ち、若年層のリーグ戦や育成組織もしっかりと整備されている。加えて今は多くの選手がヨーロッパでプレーし、主要リーグで活躍している。指導者たちは戦術的な経験を深め、選手たちを最高のコンディションでプレーさせるようになった。そうしたすべてがひとつのエコシステム(生態系)を作り上げた。誰もが最高の環境で働けるシステムだ。
そこから自信が生まれた。エコシステムが自信をもたらし、日本は世界15位にまでのぼり詰め、トップ5を破りうるまでの自信を得た。ただそれでも次なるステージに到達するには、壁を突き破る必要がある」
リバプールやマンCに優るとも劣らない育成組織が
――選手の身体能力や運動能力ではアフリカ人は日本人を上回りますが、彼らには日本のようなエコシステムを作ることができないのですね。