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「とんでもない天才がいる」北海道“ナゾの公立校”が『高校生クイズ』のダークホース? 伊沢拓司の開成高が優勝…クイズ史に残る「神回」ウラ話

posted2024/12/12 11:00

 
「とんでもない天才がいる」北海道“ナゾの公立校”が『高校生クイズ』のダークホース? 伊沢拓司の開成高が優勝…クイズ史に残る「神回」ウラ話<Number Web> photograph by Shiro Miyake

後の“クイズ王”伊沢拓司の原点になった2010年の「高校生クイズ」。ダークホースとなったのは“神童”塩越希(右)と重綱孝祐のいる旭川東高校だった

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山崎ダイ

山崎ダイDai Yamazaki

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Shiro Miyake

 今年9月、7年半続いたTBS系の人気番組『東大王』が幕を閉じた。同番組の人気の礎となったのが、「クイズ王」伊沢拓司の存在だろう。クイズメディア「QuizKnock」を設立し、日本にクイズの新たな歴史を紡いだ伊沢の原点は、2010年の『高校生クイズ』優勝まで遡る。

 もし同大会で伊沢が敗れていたら――おそらく現在の日本のクイズシーンは全く違ったものになっていただろう。では、同大会で伊沢擁する開成高校が「最も恐れた相手」とはどこだったのか。後のクイズ王を追い詰めた、「極北の公立校」の正体とは?《NumberWebノンフィクション全3回の1回目/つづきを読む》

 いまから16年前の2008年の春。旭川東高校1年生だった16歳の重綱孝祐は、友人に誘われ、クイズ研究会の部室を訪れていた。

 高校に入学して3カ月。重綱は「何となくカッコ良さそう」という実に男子高校生らしい理由で、すぐに軽音部に入部していた。

 ただ、そんな重綱でも、6年前に母校が『高校生クイズ』で優勝した経験があったのは知っていた。当時、テレビを見ていた頃は小学生だったが、それでもそのシーンは強く記憶に残ってもいた。

「あれ、良かったよな。俺もああやってテレビに出てみたいなぁ」

 もともとクイズそのものにも興味があったこともあり、偶々クラスメイトのクイ研部員にそんな話をする機会があった。すると、「じゃあ試しに重綱も来てみてよ」と声をかけられたのだ。

 そうして部室に向かってはみたが、地方公立校の同好会活動である。当然、予算もほとんどない。何年か前の先輩が買ってきたオモチャの早押し機を使って、大昔から部室にある問題集を読みながら、部員皆で楽しくクイズをする。そんな活動が基本のようだった。

 一方で、その部室で重綱は予想外の人物を発見する。

「行ったらビックリしたんです。『“あの”塩越希がいるじゃん!』って」

重綱がクイ研部室で出会った“旭川の神童”

 旭川東高は北海道でも屈指、道北地方ではNo.1の進学校である。

 当然、その地域で学力的に高い生徒たちが集まってくることになる。そして、その多くは中学時代から塾通いで、顔も見知った中であることが多かった。

「そんな中でも『塩越希というとんでもない天才がいる』という話は有名で。僕も顔は全然知らなかったんですけど、尋常じゃない頭の良さだけは噂で聞いたことがあった。その“神童”がクイ研にいたんで、なんかちょっと驚いてしまって(笑)」

 ちなみに塩越は後に大手予備校の模試で全国1位に輝いている。

 履修速度などを考えると、関東や関西の中高一貫私立校を相手に地方公立校の生徒がその成績を叩き出すということは、にわかに信じがたいことでもあった。

 一方で、重綱が実際に話してみると、塩越とは不思議とウマが合った。

 入学当初から学年トップの成績だった塩越に、最初は鼻持ちならない印象を抱いていた。だが、実際に絡んでみればノリも良く、すぐに6年前の『高校生クイズ』の話で盛り上がることもできた。

【次ページ】 2008年の『高校生クイズ』に起こった“異変”

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