「まさか、梶谷があんな選手になるなんてな」元コーチも驚いた18年のプロ生活…引退表明のDeNA→巨人・梶谷隆幸（36歳） 入団同期が見た“激動の日々”

　私は2006年のベイスターズ入団後、プロのあまりに高い壁に阻まれ、早々に捕手から内野手に転向したこともあり、同期入団だった梶谷隆幸とともに地獄のような練習に取り組んだ。素人同然だった2人に内野守備を叩き込んでくれたのが、万永（貴司）コーチだ。

　おおよそ、プロ野球選手となった人が取り組むような内容とは思えないくらい地道な基礎練習を、文字通り日が暮れるまで繰り返し、我々をなんとかプロ野球選手と呼んでもらえるレベルに引き上げてくれたコーチである。万永コーチは、これから試合が始まるグラウンドに、初めて守備につく我々2人を呼び出し、静かに語った。

2018年の宜野湾キャンプでの（左から）筆者と梶谷、万永コーチ／筆者提供

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ピッチャーの人生を、背負えるか？

「お前たちの守備は、はっきり言ってプロ野球のレベルじゃない。だから、ミスしてもエラーしても、気にするな。ただ、これだけは覚えておいてほしい。もし、お前のミスでランナーが出て、そのランナーが帰ってきたら、失点はピッチャーにつくんだ。その失点で負けたら、負け投手という記録はピッチャーにつく。その1つの負けで、そのピッチャーが使われなくなったり、それがキッカケで引退することになるかもしれない。

　そうなったらそのピッチャー、家族、応援してくれている全ての人たちの人生が変わることになるんだ。それだけの責任を背負って、あの中に立つんだ。プロ野球というのは、そういう場所だ。だからこそ、特別なことはしなくていい。ピッチャーが打ち取った打球は、確実にアウトにする。そのことだけを考えてくれ」

　この時の会話は、梶谷よりも随分早く2012年にプロ野球界を去り、すでに12年が経つ私でさえ、強烈に記憶に残っている。走れない選手が守備につくべきではない、という考えは、自分のことではなく、ピッチャーの人生を背負えなくなったということを表している。

「じゃあ代打で、っていうことにも、やっぱりならないんだよな。俺、一応、盗塁王獲っているからさ。走れないって、本当に許せないんだよな」

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