プロ野球PRESSBACK NUMBER
「これで、終わったと思った」巨人・梶谷隆幸(36歳)が引退で振り返る“気持ちが切れた”瞬間とは?…同期入団の親友に語った「坂本勇人からの言葉」
posted2024/11/03 11:02
text by
高森勇旗Yuki Takamori
photograph by
Hideki Sugiyama
2020年に横浜から巨人に移籍後、梶谷隆幸は腰や左膝のケガの影響で、2年以上に渡るリハビリ生活を余儀なくされていた。
長いリハビリ期間で見えてきたもの
体さえ治れば、また勝負ができる。それは、周囲を見返してやりたいという反骨の精神ではなく、長年かけて積み上げてきた経験であり、自信である。梶谷は、この世界で生きていくための”何か”を、確実に掴んでいた。それは、技術でもなく、メンタルでもない。練習に取り組む考え方だ。
「若い選手を見てると、練習に取り組むほんのわずかな部分に粗さがある。例えば、(坂本)勇人のバッティング練習なんて見ていると、本当に一球一球丁寧に打っている。『ちょっとそこから見ていて』と言われて、一球打つたびに、『俺はこういう感覚で打ちたいんだけど、そこからはどう見える?』と、細かく、細かく確認してくる。
2400本以上もヒットを打っていても、あれだけ丁寧に練習している。なんとなく、ただ練習をしてはいけない。全て、意味があってやっている。そういう積み重ねが、試合で生きてくる」
リハビリ中に見えてくる若手の練習への取り組みは、むしろ梶谷にとって復帰後の自信を深めていく。ケガさえ治れば、必ず勝負になる。ただ回復を待つだけの単調な日々の中、体に刻み込まれたこの世界で生き抜くための”思考法“が、モチベーションをつなぐ唯一の支えだった。
左膝の手術からリハビリに励む2022年オフ、梶谷は年俸1億円を超える選手として初めての育成選手契約となる。背番号は005。FAで移籍し、1年半をほぼリハビリに費やし、ついに育成選手に。心中穏やかではないだろうが、意外にも梶谷は明るかった。