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「大活躍のちケガ」を繰り返し…今季で現役引退の巨人・梶谷隆幸(36歳) 同期入団の親友が見た“ケガと向き合い続けた”野球人生とは?
posted2024/11/03 11:01
text by
高森勇旗Yuki Takamori
photograph by
Sankei Shimbun
「今日、多分なんだけど、『今年で野球辞める』って言われると思うわ」
家を出る時、私はなんとなく妻にそう伝えた。
多分、と言ったものの、私には確信めいたものがあった。シーズン中の、なんでもないタイミングで「ご飯に行こう」なんて、誘われた時点で分かった。
さすがにもう、限界か。2回目の登録抹消は、一縷の望みに賭ける梶谷隆幸(巨人)の心を折ってしまったのかもしれない。
開幕戦で大活躍の裏で…
開幕戦で見せた超ファインプレーと、試合を決定づける2ランホームラン――。
阿部慎之助新監督の船出を飾るあまりにも劇的な勝利に、今年のジャイアンツの飛躍と、その中心に梶谷がいることを、多くのファンが確信していた。しかし、開幕カードのあとの中日戦の初日、左膝のケガが再発し、早々に戦線を離脱。もとより、梶谷の体は開幕戦で試合に出られる状態ではなかった。
「キャンプから、左膝の状態は一進一退の感じだった。守備にもほとんどつかないで、開幕もぶっつけのような感じ。そんな中で、開幕戦の前日の夜に、膝が曲がらなくなってしまった。トレーナーに電話して、急遽翌朝膝に溜まった水を抜きに行って、その夜に開幕戦。スタメンが告げられている中で、試合に出ないという選択肢はなかった」
どうしても試合に出なければならない理由は、たくさんあった。
横浜DeNAベイスターズからFA宣言をして移籍後、まともに1年間活動できていないもどかしさ。起用してくれる阿部新監督の期待。何より、4年契約の最終年度で活躍したい思いは、本人が一番強かった。無理をすれば体が壊れることは分かっている。それでも、勝負しなければならない。体が持つかどうかは、ギリギリの賭けだった。
「このまま痛みを抱えつつでいいから、あわよくば140試合持つんじゃないか。そんな感じで毎日、神様に祈っていた」