プロ野球亭日乗BACK NUMBER
日本シリーズ“DeNA逆襲劇”の背景は捕手・戸柱恭孝のソフトバンク山川穂高対策にあり…一方の山川は「キャッチャーと勝負すると僕はほぼ負ける」
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNaoya Sanuki
posted2024/10/31 15:40
日本シリーズ第4戦、4打数無安打に終わったソフトバンクの4番・山川穂高。DeNAの山川対策が功を奏したが果たして5戦目以降は…
「惜しかったですからね。あれをどう打つとかはないですね。何年やっても0・何ミリの差ですから。あれをちゃんと打っていれば、おそらくバックスクリーンとか左中間に行くでしょうし……。狙いが悪いわけではない。打ち損ないです」
チャンスで凡退した6回の中飛をこう振り返ったのは試合後の山川だった。
交流戦等で何度か対戦したこともある投手もいるが、ほぼ初見のような状態で打席に入らなければならないのがポストシーズンのバッターの宿命だ。ただでさえ投手にはアドバンテージがある上に、相手バッテリーに徹底的にマークされる。それは4番の宿命ではあるが、その網をかい潜って、どう結果を残すか。そこに真価を問われる。それもまた4番打者なのである。
シリーズで打席に立った感覚でやはりセ・パ両リーグで投手の配球の傾向に多少の違いは感じると山川は語る。パ・リーグの投手たちは真っ直ぐ系統を中心に力で押してくるのに対して、セ・リーグの投手は変化球をコーナーに集めてかわしてくる。
「特に昨日(第3戦)の東投手は、確かに真っ直ぐも強いんですけど、その傾向を感じる部分もありました。でもケイ投手は(初回に味方打線が)三者連続三振するのを見て、当然、速い真っ直ぐに合わせていくというのはありましたよね」
山川対策は日々、変化している
そこをチェンジアップでかわされて、空振り三振に打ちとられてしまった訳である。そういう意味では、この打席は見事に相手バッテリーの術中に嵌ってしまった。うまく山川の読みを外しながら配球してきていたということだ。
「山川選手に対しては1つの対策ではなく、投手も変わるわけですから、試合ごとにかなり配球パターンも変わっていると思います。対策という点では日々、変化していっている」
こう語っていたのはDeNAの相川亮二バッテリーコーチだった。
今回のシリーズに向けてDeNAバッテリーによるソフトバンク打線対策の基本方針は、いかに山川を封じて打線を分断していくか。そこにかなりの重点を置いて対策を練ってきているという。
「コースと緩急を試合、投手によって使い分けながら。でも基本はやっぱりコースです」
こう語っていたのはシリーズ開幕から4試合でマスクをかぶってきた戸柱恭孝捕手だった。真っ直ぐは高めのボールゾーンを使いながら、変化球は左右に投げ分けて、ボール球を使いながらストライクゾーンを立体的に組み立てる。入念に練り上げた山川対策のマニュアルがそこにある訳だ。
「キャッチャーと勝負すると僕はほぼ負ける」
一方で山川の方は、そうしたDeNAバッテリーの対策に対して、あえてそういう配球の変化を考えずに打席に入ることを心がけているのだという。