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「負けて悔しくないんか?」DeNAを“日本シリーズ王手”に導いた桑原将志の猛ゲキ…“全員一丸”を引っ張るガッツマンの「7年前の悔しさ」とは
posted2024/11/01 17:02
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph by
Naoya Sanuki
「全員が同じ方向を見て戦えるかどうか。そこがすごく大事なことだと思います」
ハマのガッツマンは確信を込め、ここ数年そう語ってきた。
福岡ソフトバンクホークスの圧倒的有利の下馬評をよそに、ここまで日本シリーズで3勝2敗と26年ぶりの日本一に王手をかけた横浜DeNAベイスターズ。三浦大輔監督がシーズン当初から語っていた「チーム一丸」の精神のもと、圧倒的強者であるパ・リーグ覇者を飲み込もうとしている。
なかでも存在感を放っているのが入団13年目の31歳、ベテランの域に突入しつつある桑原将志だろう。積極的なプレースタイルと明るいキャラクターでチームを照らす唯一無二の存在であり、チームをけん引するひとりになっている。
こだわりを持つポジションであるリードオフマンとして挑んでいる日本シリーズ。桑原は第3戦で決勝のソロアーチを放つと、守備でもダイビングキャッチを試みてピンチの芽をつみチームに躍動感を与えた。さらに第4戦では猛打賞に加えダメ押しとなる2点タイムリーを放ち、第5戦は牧秀悟の3ラン本塁打のお膳立てとなる出塁、そしてまたも魅せた勝負の流れを渡さないファインプレーなど、攻守の中心選手としてチームの士気を高めている。
負けて悔しくないんか?
ポストシーズンにおいて桑原は、巨人と戦ったクライマックスシリーズ(CS)ファイナル最終戦からリードオフマンを任されている。それまで1番だった梶原昂希に代わって、下位を打っていた桑原が切り込み隊長に抜擢されたわけだが、石井琢朗チーフ打撃コーチいわく「短期決戦ということで、勢いと経験のあるクワに任せてみよう」との狙いがあった。シーズン後半から調子を上げ“残暑男”と賞賛された桑原としても勝手知ったるポジション。結果、期待に応えチームにいい波及効果を与えるに至っている。
日本シリーズ2連敗後に、キャプテンの牧秀悟の提案で行われた緊急ミーティングでは、2017年の日本シリーズを知る選手として発言を求められると「負けて悔しくないんか?」とナインに情感を込め檄を飛ばした。
その脳裏には7年前の日本シリーズで、何もできなかった自分がいた。あの時、1番センターのレギュラーとしてソフトバンクと戦っていた桑原は、全6試合に出場し、26打数4安打、打率.154と低迷し、務めを果たせずにいた。第6戦でサヨナラ負けを喫し、日本一の歓喜に沸くソフトバンクナインの様子をベンチから最後まで黙って見つめ続けていた桑原の悔しさと憤りを含んだ表情は今も忘れられない。
当時は24歳と若く、自分のことで手一杯だったが、チームとして勝つこととはどういうことなのかを痛感した瞬間だった。