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プロ野球“じつは危機的状況”とにかく打てない問題「退屈な試合でファン離れも」「引退する選手が出る可能性」専門家も衝撃…最悪のシナリオとは―2024年上半期読まれた記事 

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曹宇鉉

曹宇鉉Uhyon Cho

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photograph byNanae Suzuki

posted2024/09/17 06:01

プロ野球“じつは危機的状況”とにかく打てない問題「退屈な試合でファン離れも」「引退する選手が出る可能性」専門家も衝撃…最悪のシナリオとは―2024年上半期読まれた記事<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

ホームランが激減している今。起こりうる最悪のシナリオとは?(写真はイメージ)

「どれだけ結果を残しても『ボールのおかげ』と言われて評価されなくなってしまうのは、投手にとっても不幸なことです。結果的に打者は過小評価され、投手にしても『本当にこの数字はすごいのか』という疑念が生まれてしまう。そういった環境で得をする選手は、おそらくあまりいないのではと思います」

 打高にせよ打低にせよ、「極端な環境」は打者にとっても投手にとっても望ましくない。では、「ベターな環境」だと言える基準のようなものはあるのだろうか。宮下氏によると、リーグ平均OPSがひとつの目安になるという。

OPS「.600台前半」の異常さ

「90年代以降のプロ野球の推移を見ると、多くのシーズンでリーグ平均OPSは.700から.750の間に収まっています。MLBや他の国のリーグも参考にしたうえで、平均OPSは.700台の前半に収まるくらいがベターでしょう。そこを調整せずにいると、過去の選手たちの数字にもバイアスがかかってきてしまう。公平に記録を比較できるように、連続性をもった環境に整えることもリーグの役目ではないでしょうか」

 具体的な措置として考えられるのは、やはりNPBによるボールの調整だ。2013年には、前年までの飛ばなすぎるボールから仕様を変更した統一球に「サイレント修正」をしていたことが発覚し、加藤良三コミッショナー(当時)をはじめNPBは多くの批判を浴びた。

「シーズン中にボールを変えていい」

 当時のように、仮にボールに問題があった場合に隠蔽を行うのは論外だろう。だが、透明性を担保したうえで原因を調査し、適切な状態に調整することはむしろ健全な対応といえる。宮下氏は「ボールの変更をタブー化しないでほしい」としつつ、以下のように持論を述べた。

「もしボールに原因があったとして、『想定より飛びませんでした』と公表したら叩かれるというのは健全ではありません。何か間違いがあったときに糾弾するのではなく、適宜バランスを調整するのが当たり前になれば、リーグとして成熟していくのでは。シーズン中にボールを変えてはいけない、というルールもない(※2014年に当時の規定より飛びやすいボールが判明した際は、調査結果を公開したうえで4月中に規定内のボールに変更されている)。いずれにせよ完璧に同じ条件にコントロールするのは不可能なので、ある程度の幅を持たせて対応していくのが現実的だと思います」

 今後、極度の“投高打低リーグ”と化したプロ野球の風向きが変わることはあるのだろうか。なんらかの改革が決まった暁には、それがフェンスの手前で失速することがないよう願うばかりだ。

〈前編からつづく〉

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